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夏ホラーレビュー
並盛りライス「枇杷の木」
枇杷の木の下では遊んではいけない
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 枇杷は種を蒔くと簡単に発芽するので、観葉植物として多くの人に楽しまれている植物だ。食用にも、薬用にもなる。花言葉は「あなたに打ち明ける」。主人公は幼い頃から父親に「枇杷の木の下で遊んではいけない」と言われて育つ。枇杷の木への警戒心をなんとなく刷り込まれていた主人公。ある日、事件は起こる。
 枇杷の木というアイテムをうまく使い、おどろおどろしい恐怖を演出することにこの作品は成功している。淡々とした語り口には親近感があり、まるで本当にあったことを聞いているような、そんな錯覚に陥りそうになる。そして時折、濃厚に香ってくる枇杷の甘い香り。目を閉じることも無く白昼夢を感じ、そして爽やかな芳香さえも嗅いでしまう。なんとも感覚的に刺激のあるホラーだ。
 アメリカ映画のようにゾンビやお化けが次々と出てくるわけではない。歩いているとふいにあるはずの無い匂いを嗅ぎ、カーテンの横に漂う暗闇の向こうになにかの気配を感じるような、とても静かで不気味な物語。そしてそれは母親に秘密の話を打ち明けられるようにひっそりと、心に入り込む。

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あきゅろす。
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