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SS by astra
難題「素兎の本音」
 嗚呼、此ノ女ハ、本當に狂ツテイル。
 束ノ間ノ暇潰シノ為ニ、人ヲ簡単ニ使ヒ捨テル。彼ノ男ガ此処ニ辿リ着ク迄ニ、何レ程ノ時ヲ費シタカナド、全ク考ヘヌ。

 間モ無ク彼女ガ遣ッテ來ル。怒リニ燃ヘ、文字通リノ意味デモ燃ヘテイル、彼女ガ。

「――――」

 怒鳴リ乍予想通リ遣ッテ來タ彼女ヲ見テ、此ノ女ハ嗤ツテイル。其レハ其レハ、樂シサフニ。

 ・・・

 ・・・

 ・・・このしゃべり方疲れたウサ。
 要は姫様が藤原妹紅と遊ぶために、一人の男の人生を弄んだという話をそれっぽく語りたかったウサ。
 でもしんどいウサ。無理は健康によくないので概要だけ喋るウサ。ついでにあざとくウサウサ言うのも止めるウサ。

 ・・・

 昔、といっても姫様やお師匠様にとっては1秒前と変わらないくらいの昔、分かりやすく言うと20年ほど前の話ね。姫様は、気紛れに竹林に行き倒れていた男の子を助けたの。それだけじゃなく、姫様はその男の子を永遠亭までお持ち帰りして優しく介抱したワケ。完全に癒えるまで1ヶ月くらいかな?
 アンタは知らないかも知れないけどさ、姫様って魔性じゃん?姫様的にはただの暇潰しだったのかも知れないけど、その男の子は姫様にメロメロになっちゃったワケ。
 で、ウけるんだけど、その男の子、あろうことか姫様にプロポーズしちゃったのよ。それで姫様の悪い癖が出ちゃったんだよね。姫様の得意技、難題。
 姫様がその子のプロポーズを受ける条件として出したのは、『不死鳥の肝』。これが何を指すかは分かるよね?姫様は彼の一世一代の大決意を、愛しの藤原妹紅との遊びのいちアクセントにてやろう、程度にしか考えなかったワケ。非道いよね。でも凄かったよ、姫様のキメ台詞。

「ありがとうございます。私も貴方を愛しています。でも、貴方の求婚を受けるわけには参りません。私は不老不死の身、貴方とは生きる刻が違いすぎます。もし貴方と結ばれたなら、貴方が先に逝ってしまったあと、私はどれほどの時を独りで泣き暮らさなければならないのでしょう?嗚呼、貴方が不老不死の身であれば・・・ そういえば、不死鳥の肝を食べれば不老不死になるという言い伝えがあります。貴方がそれを手に入れられればあるいは・・・ いえ、でも、そんな危険なこと貴方にさせるわけには・・・」

 こんなことを目に涙をためて言われちゃったら、男は騙されちゃうよね。ホント、単純なんだから。ま、それだから私のお得意さまでもあるんだけどね、男ってやつは。
 おっと、話が逸れたね。
 その気になった男の子は、20年間、不死鳥を探し、不死鳥から肝を奪れるように鍛錬を積んだのさ。三十路も半ばにさしかかったその子は、なかなか渋いいい男になっていたよ。大国主サマには及ばないけどね。ん?30を過ぎた男に「その子」は無いんじゃないかって?私にとっては30歳も100歳もみんな赤ん坊みたいなもんだよ。こんあ感覚じゃなきゃ姫様やお師匠様とは付き合っていけないよ。
 まあそれはともかくとして、先日、その子はとうとう見つけたのさ、不死鳥―藤原妹紅をね。で、姫様との結婚を夢見て彼は不死鳥を狩りに行ったのさ。
 結論を言っちゃうと返り討ち。当然だね。20年の鍛錬でどうにかなるものじゃないよ、不死鳥の1300年ってのは。
 で、藤原妹紅はこれに怒って永遠亭に乗り込んできた。それが冒頭ってワケよ。
 そりゃ怒るよね、父親と同じように姫様に騙された男が自分を襲いに来るってんだから。トラウマを抉るえげつないやり方だよ。
 怒りくるった藤原妹紅は姫様にとって格好の遊び相手だった。ホント、楽しそうに殺しあってたなぁ・・・

 と、まぁ、これが今回の話の顛末ってワケ。
 いやいや、永遠を生きる奴ってすごいよね。30過ぎの男にとって、20年って人生のほとんど全てだよ?一時の暇潰しのために、人の一生を滅茶苦茶にするんだからさ。おお、こわいこわい。

 これで分かったろ、少年。アンタもあんな性悪に騙されちゃいけないよ?
 それ、姫様へのプレゼントだろう。

 これは私が預かっといてやるから、深入りしないうちにさあ、帰った帰った!永遠亭にたどり着く前に幸運の兎に会えて良かったウサね!



久しぶりノシ
てゐの口調がよく分かりません。

さて、このお話は実話なのか、それともてゐが姫様へのプレゼントを騙し取るための創作なのか。
てゐのみぞ知るところです。

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あきゅろす。
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