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SS by astra
ダンデライオンは猫科の動物ではない 幽香、魔理沙
「弱いわね。」

 地面に倒れ伏した黒い少女に向かって言い放つ。少し前まで白黒だった少女の服は、煤と土と、少しの血で汚れてしまっている。
 ここしばらく、この白黒―霧雨魔理沙―は毎日のように私に弾幕勝負を挑んでくる。毎回相手をしてやるのは面倒くさいのだけれど、何度のされてもへこたれずに突っかかってくる姿は、踏まれても踏まれても立ち上がってくるタンポポのようで、嫌いじゃない。

「そろそろ顔を上げたらどう?」

 白黒は私に背を向けて立ち上がり、傍に落ちていた箒を拾う。箒を握り締める拳が震えているのは、零れそうになる涙を堪えているからだろうか。

「畜生!次は絶対勝ってやるからな!」

 白黒はこちらに顔を向けないまま、捨て台詞を残して箒に魔力を込める。
 飛び立とうとするその背中に、私は声をかける。

「ねぇ、タンポポはライオンになれると思う?」
「いきなり何の話だ?」
「貴女の話よ。」
「妖怪の言うことは分けがわからんな。」
「そう?まぁ、いいわ。また来るんでしょう?待ってるわ。」

 白黒は私の問いに答えないまま飛び立った。夜の帳が降り始める中、星屑を散らして駆ける白黒を、私はとても美しいと思った。

 白黒が私のところへ来るようにけしかけているのは霊夢だろうか。それとも、白黒の師匠を気取っている悪霊か。いずれにせよ白黒の弾幕(あそ)び方を見る限り、白黒自身が気づいて私のところへ来ている訳ではなさそうだ。
 今の白黒の弾幕び方は、霊夢を意識している。白黒にとって一番身近な弾幕びの手本は霊夢なのだろう。でも、白黒に霊夢のような弾幕び方は向いていない。いや、出来ないと言ったほうが正しい。
 相手の攻撃を避け、後の先をとって反撃を確実に決める。そんな弾幕び方は、弾のほうが勝手に避けて飛んでくれるような奴でもなければ、そう簡単にできるものじゃない。白黒はそれほど器用なほうではなさそうだから尚更だ。
 白黒は、私ほどじゃあないけれど、火力がある。ならば先手必勝、先に仕掛けて一気に畳み掛けるのが正解だ。

 タンポポが手本にするべきなのは、種のまったく異なるライオンではない。向日葵だ。

 魔理沙がこれからも、踏まれても踏まれても立ち上がる意志を見せるのなら、私、風見幽香が、弾幕び方というものを教えてやろうじゃないか。

マスタースパーク開発秘話的な?
相変わらず本文からお題が見えてこない私です。
今回は元ネタがあって、それが犬だったりします。本文だけ読んで元ネタが分かった方は博識だと思います。
元ネタは、「虎を画いて狗に類す」という諺で、出典は『「後漢書」馬援伝』です。
意味は、「立派なものをまねようとしてかえって失敗したり、学んだことを活かせずかえってやりそこなってしまうこと」ですね。

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