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SS by astra
オトメゴコロ side M りんまり
交流☆わはーイラスレの【キス】イベントで夢乃葉さんが描かれたイラストにSSを付けさせて頂きました。side Kの前編です。

 

 空になった一升瓶。数刻前には美しく料理が盛り付けられていたものの、今では油汚れを残すのみとなった皿。杯からこぼれた酒が畳の上に描いた染み。少し顔色の悪い現人神。いつもより若干赤に傾いている紅白の巫女。宴もたけなわではあるが、アルコールに脳を侵された少女たちの話は尽きない。

「そろそろ聞かせてもらおうかしら?魔理沙。」

「んあ?何のことだ?」

 唐突にそう尋ねた霊夢に、魔理沙は問い返す。その答えを待っていました、とばかりに霊夢はにやける。その瞳はまるで、ねずみを見つけた猫のよう。

「とぼけちゃってぇ〜。昨日霖之助さんとデートしてたじゃない?さあ、話してもら…」

「ば、馬鹿!霊夢、声がでかい!」

 ここぞとばかりに声を一段と、いや、二段も三段も大きくして言った霊夢の口を、魔理沙はあわてて塞ぐが、時すでに遅し。

「え、魔理沙いつの間に霖之助さんとうまくいってたのよ!?」

「ちょっと、どういうことよ?あんなに協力してあげたのに、私たちに報告は無しなの?」

「霖之助さんって、あの道具屋の人ですよね?魔理沙さんがずっと憧れてたっていう。」

「kwsk!」

 それぞれに甲高い嬌声を上げて、少女たちが魔理沙と霊夢の周りに集まってきていた。皆が近くに集まるのを待って、霊夢が魔理沙に告げる。

「さあ、魔理沙?話してもらおうかしら?」

「あ〜、どこから話せばいいのかな。うぅ、恥ずかしいぜ。まずはだな・・・」

 アルコールで赤くなっていた顔をさらに赤く染めながら、魔理沙は話し始めた。



「・・・で、最後に家の前で、その、あれだ、ちゅー、して別れた。こ、これで終わりだ!」

 これで魔理沙は話を打ち切ろうとするが、周りを囲む少女たちの好奇に満ちた視線と喜色に満ちた嬌声はそれを許してくれそうにない。

「キス!?初デートでいきなりキスたぁ魔理沙もやるわねぇ。ファーストキスだったんでしょう?ね、どんな感じだった?」

「うぅ…そんなことまで話さなきゃ駄目か?」

魔理沙はうつむいて左手で頭をかきながら、右手で体の後ろの辺りを探る。探していたもの――お気に入りの三角帽子を見つけて、魔理沙はそれを目深にかぶった。

「あー、ええとだな、うちの近くに森が少し開けた場所があってな、そこからは空がよく見えるんだ。そこで星や月を見ながら少し話をしてたんだが、その、静かだし、星は綺麗だし、何というか、そーゆー雰囲気になってきたんだ。」

 魔理沙は、当時の状況を思い出して思わず緩む頬を帽子で隠しながら続ける。

「それで香霖のやつ、腰に手なんか回してきやがって、で、まぁそのまま雰囲気に流されて気がついたら香霖の顔が目の前にあって…って感じだった、かな?」

「やったじゃない!」

 今にも消え入りそうな声で魔理沙が締めくくると、祝福の言葉と共に霊夢が飛びついてきた。拍子に帽子が脱げ、顕わになった髪をもみくちゃにされる。その後、他の皆も霊夢に倣う。
 ぼさぼさの髪、しわくちゃの服で畳の上に大の字に倒れこんだ魔理沙を、皆は笑顔で見下ろしている。そして魔理沙は、この愛すべき友人たちに笑顔で言った。

「ひどいぜ。」


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