SS by astra
オトメゴコロ side K りんまり
交流☆わはーイラスレの【キス】イベントでアカサタさんが描かれたイラストにSSを付けさせて頂きました。side Mの後編です。先にside Mをお読みください。
「そんな暗いところで本を読んでると目を悪くしますわよ?」
「出来れば玄関から入ってきてくれないか。それで今日は何の用だい?こんな遅くに。」
スキマから顔を出して紫が開口一番に告げた言葉に、霖之助は読んでいる本から視線を上げることなく答えた。いつものことではあるが、少しくらいは驚いてくれてもいいのではないかと紫は思う。
「可愛らしい彼女をお届けに。」
そこで初めて霖之助は紫に目を向けた。紫は、霖之助が自分のほうを向いたことを確認して、散らかった部屋の中央に敷いてある霖之助の寝床に魔理沙を寝かせる。
何で魔理沙をうちに連れて来たんだ?声には出さないが、霖之助の視線はそう訴えていた。
「少し飲ませ過ぎましたわ。一人で寝かしておくのも心配で。…いたずらしちゃ駄目よ?」
「しないよ。」
「しないの?」
紫は何とも不思議そうに霖之助に尋ねる。魔理沙の話を聞いて、霖之助の朴念仁ぶりも多少はましになったのではないかと思っていたのだが。
「あら、魔理沙の話を聞いて、貴方もなかなかやるものだと感心していたところですのに。」
「何のことだい?」
全く何のことだか分からないという素振りで霖之助は尋ねてくる。仕方がないので、紫は魔理沙が今日の宴会で話していた内容を霖之助に伝えてやる。
「ああ、接吻のことか。」
やっと得心がいったという風に霖之助は言う。まったくこの坊やは。これで多少なりとも照れた素振りを見せでもすれば、少しはかわいげもあるというのに。本当に朴念仁だ。
「それにしても、魔理沙の話はずいぶん誇張されてるなぁ。そんな魔理沙が言うようなロマンチックなものじゃあなかったよ。別れ際に魔理沙が飛びついてきてね。接吻というより口と口がぶつかったって言ったほうがしっくり…」
そこまで聞いて、紫は持っていた扇子で霖之助の口をふさぎ、そしてため息をひとつ吐いて霖之助に告げた。
「本当に貴方は朴念仁ですのね。いい?魔理沙の前でそんなこと言っては駄目よ。」
霖之助の話のほうが、おそらくは事実に近いのだろう。魔理沙は本当のところ、口付けをした時のことを鮮明には覚えていないのだ。緊張して頭が真っ白になっていたとか、あまりに心臓が弾みすぎていたとか、そういった理由で。乙女ならよくある話だ。
かといって、紫は魔理沙が嘘を言ったとも思っていない。霖之助とのファーストキスは、事実、魔理沙にはああいう風に感じられたのだ。乙女ならよくある話だ。
「貴方はもう少し乙女心というものを勉強したほうがいいわ。でないと、魔理沙に愛想を尽かされてしまいますわよ。」
ほんの少しだけいつもより強い調子で言って、八雲紫はスキマを開く。これでこの朴念仁が少しは態度を改めてくれるといいのだけれど。
「それでは、御機嫌よう」
後日、香霖堂には外の世界から流れ着いた恋愛心理学の本を一心不乱に読む霖之助の姿があったとか。
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