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adagio(グラフェア)
 


「重いでしょう?ごめんね?」

「いや、重くないさ」



偶然、街を巡回していたら、道の真ん中で足をくじいて座り込んでしまったフェアを見つけた。

何でも、荷物が重くてよろめいてしまったらしい。
辺りに散乱してしまった荷物を拾ってくれた周りの人に、動けないながらもお礼を言っていて。

何を考えるより先に、俺はフェアの元へと駆け寄っていた。




「でも荷物もかなり重かったし、荷物を持ってくれるだけで十分楽になるから…!」



フェアはと言えば、さっきからこの調子だ。

足をくじいたなら立つのも辛いはずなのに、大丈夫、大丈夫を繰り返す。



「怪我人はおとなしくしてなきゃダメだろう?
大丈夫だって。俺はこんな位でバテるような鍛え方はしてないから」



そう言うと、背中におぶったフェアは少し静かになった。



「お姉ちゃんの所までで良いから…」

「分かった分かった。ちゃんと薬塗ってもらうんだぞ?」



うん、と小さな返事が聞こえた。
ずり落ち始めていた荷物をもう一度肩まで上げると、フェアがきゅ、と袖口を掴む。



「すまん、揺れたか?」

「ううん、そうじゃないよ」

「もし足が痛むようなら言うんだぞ?」

「………うん」



日が沈みかけた空に向かって歩いてるから、少しまぶしくて目を細める。

何だか背中のフェアがとても温かく感じた。
チリチリと頬が焼けるような熱を感じて、きっとフェアもこの熱で温かくなっているんだろうと思った。





フェアの足に気を遣りながら、………この熱をもう少し感じたいと思いながら、ミントさんの家までの道のりをゆっくり、ゆっくり歩くことにしようと思った。









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個人的にこの二人は少し鈍感すぎる位の方が良いと思うんです。

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