3 「気持ち良いね」 「でも飛んでいっちゃわないかしら?」 「ばさばさって音がしなくなったら、見に行けばいいことだろ」 3人でシーツを洗った日は、忘れじの面影亭の泊まり客2人が確定する。 オレの部屋にシーツを広げて、3人で夜まで遊ぶのだ。 夜が好きじゃなかったオレを気遣ってのものだったのか、 それとも端にシーツの気持ち良さに惚れ込んだだけのことなのかは、今となっては分からない。 でもそのお陰で、天気の良い日には夜が少しだけ楽しみになったものだった。 「でも、昔とは全然状況が変わったわね」 「何がだ?」 「この宿に、人が増えたってこと。もう泊まりなんて、部屋がなくてできないんじゃないの?」 予想外の言葉に目線を向けると、リシェルとルシアンの沈んだ顔がそこにはあった。 始めた理由は何であれ、結局はここにいる3人全員がそのイベントを楽しみにしている。 それが何だかうれしくて、つい口元がほころぶのを我慢しながら、オレはわざと目線を外して言った。 「なんだ、今日は泊まりに来ないのか? せっかくお菓子も用意してたっていうのになあ」 途端にすごい勢いで顔を上げた2人を見てオレがこらえきれずに吹き出すと、両方ともわざと言ったことに気づいたみたいだ。 [前へ][次へ] [戻る] |