君がそうしたいなら。
「今日は少し出かけようか」
全ての部屋のカーテンを開け、白み始めた空から降り注ぐ日の光を一身に浴びて、フェアは笑った。
「いい天気だからね…」
「ホントにねー。
せっかくの休みなんだし、こんな日に家にこもってたらカビが生えちゃう!」
外で健康的に遊び回る、という経験に乏しい僕を、フェアは休みになれば必ずどこかへ連れ出してくれる。
目的を達することしか眼中になかった頃は、どんな所へ行っても周りを見渡して感慨に浸る余裕──時間的にも、精神的にも──がなかったから、見るもの全てが新鮮な驚きをもたらしてくれるのだ。
肌寒さすら感じられる、緑の木々のさやぐ音を
針のように日の光に煌めく、湖の水面を
朝の澄んだ空気を包む、穏やかな霧を
手を伸ばせば届くような、降り注ぐ満天の星空を
感じられるようになったのは、君がいてくれるから
「洗濯物を片付けたら、出発しようか?」
「もちろん、君がそうしたいなら。僕に異論はないよ?」
「ギアンってそればっかり言うよね。
……わたしが我儘言っても否定しないけど、迷惑だとか思ってないの?」
「迷惑だなんて思ってないよ。だってフェアが望むことは、僕の望むことでもあるから」
「?」
「僕は、君がしたいことを、僕も一緒にしたいと思ってるだけだよ。
さあ、早く用事を片付けてしまおう。早くしないと、太陽が高く昇ってしまうからね」
──君は自覚がないかも知れないけど、君はいつも僕のことを、僕の望むことを考えて行動してくれる。
それを
僕は嬉しいと感じてしまう。
ずっと隣に立っていたいと、大事にしたいと、そう思ってしまうんだ。
「今日は平原に行ってみようか。あったかいから、草の上でお昼寝しようよ。
お弁当、はりきって作るから!」
フェアの笑った表情に、こっちもつられて笑ってしまう。
「もちろん。君がそうしたいならね」
なんて、心地好いんだろう。
お題:xxx-title様
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