弟俺 G 「投間っ!」 バンッと音が鳴るほど扉を強く開ければ、そこにいた世史は冷たいシャワーを浴びたまま驚いて日向を振り返った。 「なっ…何入って来てんだ馬鹿っ!」 怒鳴りながら慌てて近くにあったタオルを腰に充てるも、日向の目にはしかとその立ち上がったモノが見えた訳で。 「…ごめん投間、俺…」 先程世史がはだけさせた、気持ち程度の服が濡れるのも構わず、日向は浴室へと足を踏み入れた。 狭い浴室に逃げ場などある筈もなく、世史は軽いパニックに陥る。 「ずっと投間にあまえてた。俺が、覚悟決められないでいたから、ずっと我慢させてきた」 世史の左手をとる。 短い間だったけど、日向の球を取ってくれた手。 きっとこれからは、その役目は来ないだろうけど。 でもずっと、一緒に歩いて行きたい手。 「…日向、」 世史の言葉を聞きながら、その手をぎゅうっと握り締める。 ここできちんと伝えなければ、次がいつになるのか分からない。 もう来ないかもしれない。 諦められる、気がする。 だってきっと、世史は疑っていたから。日向が、世史をちゃんと好きなのか。 「…俺は、投間が好きだ」 恐怖から、流されて付き合い出したわけじゃない。 ちゃんと好きで、離れたくなくて、誰にも取られたくない。 きっとそれが世史には伝わらない。 言葉に出して来たわけでもない。 だから、今。 「投間が、好きで、」 「………」 「だから…、俺も、投間と、…」 出るな涙。 ちゃんと伝え切らなければならない。 日向は溢れる涙を堪えて、世史を見据える。 「ちゃんと愛し合いたい…っ」 「…っ…」 言い切ると同時に世史に抱き締められる。 我慢しきれなかった涙が、日向の頬を伝う。 「…お前、ほんと…馬鹿」 「あ…投間が、い、いやなら、いい…」 「違うだろ。なんでそこで引くんだよ」 全然良くないのは、肩に直に感じる涙と、一瞬不安気にビクリと揺れた身体から分かる。 「…加減できなくなるぞ」 その世史の言葉に日向が少し安心したのと、――しなくていいと呟いた日向の声は、果たして世史に届いたのか。 20101210 [←][→] |