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弟俺
投手じゃなかったら?(世日)


コイツが投手じゃなかったら、もっと簡単だったかもしれない、と、ふと思う瞬間がある。

「投間?どうした?…今日、なんか体調悪い?」
「………なんでもねぇよ」
「…えっ」

部活の休憩時間、下から覗き込むように問い掛けてくる日向の顔を見ないようにしながら答える。
…そうしたら案の定、目を丸くした日向が俺に詰め寄って来た。

「投間、声ガラガラじゃないか!なに、風邪!?
体調悪いなら部活なんてしてないで家で休んでなよ!」
「…違ぇし」
「なにが!?投間、ホント声ヤバいよ!?」

心配されて少しだけ嬉しいのと鬱陶しいのがない交ぜになりながら、バレちゃ仕方ないと日向を振り返る。

「…熱はねぇし、ただ喉がイカれただけなんだよ」
「そ…そうなんだ?」

でもそれって風邪引く手前なんじゃ?とまだ不安そうな日向を無視しながら、昨日のことを思い出す。

昨日は、あのバカ兄貴がどうっしても聞き分けなくて、しかも無駄に逃げ回りやがるから、叫びながら文句をぶつけていたのだ。

そんな情けない理由を言うわけにも行かず、シラを切る。

それでも、日向の視線が俺から離れないから、チッと舌打ちしてから日向を見やった。

「………なんだよ」
「えっ!?いや、あのっ…。え、へへ、ゴメン。
投間、風邪かもしれないのに、俺今、掠れてる投間の声がセクシーだなぁとか考えちゃってた」

不謹慎だよな、と笑う日向は、照れのせいか頬が赤い。


……ちくしょう。
キスしてやろうかと思うくらいツボに入ったのは秘密の話だ。


…こういう時、コイツが投手じゃなかったら、と考えることがある。
この喉の痛みが摩耗したせいだけじゃなく、本当に風邪を引く手前だったら。

……投手に風邪引かせるわけにはいかねぇ、と、変なとこで引いちまう。






投手じゃなかったら?







20120130
そもそも仲良くなんかなってない。

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あきゅろす。
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