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涙が止まりません





「また焼けたね」



貴女はそう言って微笑んだ。

別に冷房をつけてる訳じゃないし、家の中は夏特有の蒸暑い感じなのに。
俺の背筋はピンと伸びた。



「でも直ぐに白に戻るんだよね、羨ましいな」



羨ましいなって、貴女は一際白い肌なのに。
俺はそんな事を思いながら自然と貴女の首筋が目に入った。

俺は直ぐさまに後悔した。見たくもない物も一緒に目に入る。
白い肌だから余計に際立って、赤い痕が咲いていた。



「…兄貴は上の部屋」

「そっか、ありがとう」



貴女がこの家にくる理由なんてそれしかないじゃないか。
ありがとうなんて言葉がこんなにも痛いなんて、思いもしなかった。



叶いもしない思いを諦める事も出来ずに抱き続ける。
なんで片思いなんてわざわざするのかなんて、少し前の自分なら嘲笑ってたのに。

しかもこれが初恋だと気付いた時には流石に笑いが込み上げた。



「出掛けて来るから、留守番頼むな」



どたばたと階段を下りて来る音が聞こえたかと思うと、兄貴はそれだけ伝えて足早に消えて行った。
複雑だよな、初恋が兄貴の彼女だとか。



「いってきます、部活頑張ってね」



手を振る貴女に、なんと声を掛けようか。
迷ってる最中に貴女は行ってしまった。

誰もいなくなった家に静けさだけが取り残され、蝉の無く声が鬱陶しい程聞こえて来る。



まだ、まだ大丈夫

何が大丈夫なのかよくわからないけど、ひたすら大丈夫だと自分に言い聞かせた。

あぁどうしよう。心臓が押し潰される様な苦しさで、目頭が熱くてクラクラする。
それを誤魔化す様にテーブルに伏せた時には既に遅くって。

とまんない。
情け無くて、とまんない。



とめるすべもわからなくて、誰もいない静かな家で。
蝉の音と啜り泣く声がやたらと響いた。













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