存在証明
名前がある。
薄っぺらい紙の上に書かれただけの名前。何時しか無くなる名前だ。
「あんたなんかいなくなればいいのに」
あんたこそ、あんたこそいなくなればよかったのに。
てめぇのつけた名前すら忘れる様な馬鹿なあんたこそ、もっと早くいなくればよかったのに。
どうしてもっと早くいなくならなかったの。
中途半端に残して。どうしろっていうの。
名前がある。
あたしの名前?形だけでしょう?最近形を呼ばれても気付かないの。
口を動かして空気を振動させて、ああホラ消えた。跡形もなく。
なのにあんたときたら、畳にこびりついた黒い血痕。
脳裏に焼き付いた醜い残像をハッキリと遺して逝ったの。
あたしを残して、
あたしの名前だけ残して、
それ以上以下も無く、
あんたは逝ってしまったの。
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