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机のらくがき





選択授業が終わって自分の教室の机に戻り、あたしは何時ものように溜息を付いた。
机の右端、犬の様な猫の落書き。吹出しには少女漫画の様なクサい台詞が並んでいる。


「読んでくれた?って早速消しちゃの!?」


ひょこりと現れた彼はコロコロと表情を変えて、あたしの手にある消しゴムを奪った。


「返してよ、この落書恥ずかしいんだからさ」

「‥‥‥だって、何も返事してくれないじゃんか」


だって、って‥‥‥あたしより女の子っぽいじゃないか。
身長はちゃんと彼の方が大きくて実際はあたしが見上げてるのに。


「イエスかノーか、聞かせて」

「‥‥‥ノー」


あ、自分で聞いといて泣きそうだよ。


「って言うかさ、高校生の告白に"一生"とか"結婚"とか重いから」

「うっ‥‥‥ごめん」


しょぼんと俯いてしまった彼を見ながら、あたしはもう一度机の落書を見た。
"君を一生守る""結婚して下さい""君の瞳に恋してる"エトセトラ。(寒気がする)

ふと、左端の落書に目が止まる。いつもはこんな所に落書は無い。


「どうしたの?」


彼に言われてあたしはハッとした。今あたし、笑ってた。


「ここの落書は消し忘れたの?」


左端の落書を指差して、彼は目を見開いてから耳を真っ赤にした。


「あたし、こっちの告白の方が好きだよ」

「あー恥ずかしいっ!」


茹蛸になった彼に微笑みながら、あたしはもう一度左端の落書に目をやった。

"どうしよう、好き過ぎて死にそう"

何時もの可愛らしい字の落書じゃなくて、少し荒い字で書きなぐってあって。


「こっちの告白ならOKするのにな」

「ホントに?!」


だって、下手な落書きの告白より一杯気持ちが伝わった気がしたから。
言葉を並べるより、ずっと分かりやすかったから。


「もう、机に落書するのはやめてね」













あきゅろす。
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