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あと3cmの距離



それはあと5センチ、いや、3センチかもしれない。どちらにしろこれは相当近い。
引くにも引けない距離、勇気を振り絞るにはなかなか遠い距離。


「まさか…童て「黙れ」


可愛い顔して下品な言葉を無表情で告げようとした彼女の口を掌で塞いだ。
あと一歩止めるのが遅かったら、俺は今ごろ立ち直れないほどの痛手に平伏していただろう。


「じゃあ何よ?焦らし?」

「いや…心の‥‥」

「心の準備は乙女のモノよ」


はい…全くそうですね。何をやっているんだ自分。情けないったらありゃしない。
自分の感情を素直に吐き出して、堪えてきた欲望を剥き出しにすればいいだけの事なのに。

なんてこった。大事にし過ぎて何も出来なくなっているじゃないか。


「‥‥‥ばーか」

「あ」


情けない声が自分の口から洩れた時、その距離は呆気なくゼロになった。
一瞬触れただけで名残惜しく離れた彼女の唇を自然と眼で追う。


「ヘタレね、ヘタレ」


可哀相なあたし、そう言いながら頬を赤く染めた君の、照れ隠しはとても嬉しいもの。
ああ情けなくてごめんね。意気地無しでごめんね。愛しいとはとても難しいね。

それはあと5センチ、いや、3センチかもしれない。どちらにしろこれは君と俺の距離。








あきゅろす。
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