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雨宿り





「風邪引くよ」

「……したら、悲しむかな」


少なからず俺は悲しいと、発する事もなく飲み込んだ言葉が咽喉に詰まる。
そんな言葉を彼女は欲していないから。俺は今、雨の中に佇む彼女に傘を翳してあげることぐらいしか出来ない。

それもまた、彼女が望んでいるのかはわからないけれど。この傘を抜け出し、雨の下に戻ることはしなかったから、俺はひとつの傘を彼女に翳し続けた。


「風邪、引いちゃうよ」


ふたりで雨を凌ぐにはあまりにも小さな傘。彼女を庇えば今度は俺を濡らす。
けれど今は、それすらも自己満足なのだ。

俺の台詞を繰り返し紡いだ彼女が薄笑いを浮かべる。

ごめんね、どれもエゴ。彼女が望まなくなって、必要じゃないと思ったって。俺がそう望み、必要としているから。
無情にも彼女の体温を奪う雨から、せめて身体だけでも守れたら。













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