[携帯モード] [URL送信]
灯草灰









雨が降頻る中、
鈍色に染まる独りの自分。



元々、自分は独りだけど。



それでも何かを求めては彷徨って
掬上げては零れ壊れる。

上辺だけの優しさとか痛いよね?
馬鹿げた本能が身を守る。








「何やってんの?」





急に響いたその声は、
雨に消えそうなくらいの低い声。

暗くて顔も見えないし、姿も曖昧にしか確認出来ないけど
確かに間違えるはずも無い。

“あいつ” だと。





相変わらず降り続ける雨の中、そいつの傘に当たる雨の音がやけに耳に響くし。
それっきり何も喋らないから、余計に静まり返った気がした。








「何なのあんた?」

「こっちの台詞だ」





ホントもう、何なんだ。

ジワリジワリ確実に縮まる距離、
見えない影がより小さく。

あいつの傘の縁が当たるくらい。
強張ったあいつの表情が伺えるくらい。



近い、距離。





光なんて、
雲の間から漏れる月明りと、街燈の霞んだモノしかない筈。

なのにどうしてか、
あいつの顔だけは鮮明に分かる。





闇の中、光の中
あたし確かにあいつを見た。








突き放した筈だよ。

何度その傘から逃げては雨に隠れて。
それでも何度も直ぐ見つかる。



「鬼ごっこはお終いだよ」

「…一っつ!」



掴まれた腕から伝わる熱があたしを捕まえる。
ホントは、鬼ごっこなんて嫌いだ。



上辺だけの優しさとか、上辺だけでよかったのに。
あたしは馬鹿の儘気付かずに本能だけで生きてればよかったのに。








雨に彷徨う道標。

何時も探求してた側にはあいつの傘模様。



もう、知らないから。













あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!