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センチメンタルサマー








手を伸ばせば必ず届くと安心し、
喰われた自分は流れてく。

途方のない明日へと。





太陽に焦がれたと呟いて、
照り付けた君が恋しいと

今更思う秋頃に、
残るモノなんて何もない。



あの時に、思い出も君も
夏も終わったのだから。








『暑い』
暑いと繰り返し、

折り返し。



君の頬に流れる滴が煌めく。
憎い程の絢爛の様。



まだとても近い距離。
あぁでももう遠い距離。





「聞いてるの?」



何度も何度も言わなくたって、
そんなに肩を揺さぶらなくたって

君の声なら聞こえてるよ。
近い距離の筈なら。





君と歩いたこの坂道も、
今や蜃気楼の彼方かな。

滲んで先が見えないよ。
これは自分だけ?



肩で息して喉に詰まらせ、髪を濡らすは夏の涙。
無情にも直ぐさま赤に焼かれるけれど。

君色に染まる前に。





最初の別れ。
最後の別れ。








見上げた空が滲んで見えて。
青い空すら蜃気楼だと望んだ。



あぁでも相変わらず。

何時もの青い空が今日も青であるように。
何時もの自分が自分であるように。



上手く、誤魔化す事も出来ずに

青い空は赤く染まり、
只管走り続けた自分が居た。








濡れた頬は夏の涙?
過ぎる風が刃のように痛い。



君に、言えなかった。
『聞いてるよ』 って。



ただ君が、側に居れば
それだけでよかったのに。





頬を霞める風は、

もう冷たい。










夏が おわる

















あきゅろす。
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