[携帯モード] [URL送信]
太陽と月








君は気付きもしない。



その激しく照る独占欲と、
曖昧な優しさ。

時折微笑む小さな嘆き。
哀しき笑みで偽って



鳴いてもいいよ、と
月は太陽に囁くから…










太陽と月










ベッドの中で目が覚めて、君の寝顔で視界が埋まる。

カーテンの隙間から漏れる朝陽が君の白い肌を照らす。
それはとても不思議で、妖しく哀しく綺麗。



「…一ムカつく」



思わず呟いた自分の口を片手で塞ぎ、
相変わらず規則正しい寝息をたてる君を再度見る。



頬に手を添えれば柔らかく熱が伝わり、影をつくる長い睫が指先に触れた。



「っん‥‥‥」



ピクリと肩を震わせて、小さく喘いだ君の声が
俺の頭の中を支配する様に、谺してくらりと眩暈を起こす。



「っち一…」



崩れかけた何かに気付いて、添えていた手に力を込めて
君のもとから離れて行く。





らしくもないこの焦り様。
我武者羅に前髪を掻き毟る。


君などいなかった様に。
心臓は何時も通りの速度で…

なんて無理な話。



今だってほら、

椅子に腰掛けながらベッドでまだ寝ている君を
視線で追っかけてはどこか安心してる。








そうこうしてるうちに、俺はふとある事を思い出す。

以前君から聞いた、君の話。





『朝が嫌い』



今も耳に残る君の珍しく不機嫌な声色。

目を細めて、朝陽に手を翳し
払い除ける様にまた布団に潜り込む。



『眩しいし…痛い』



朝からカーテンを閉め切って、淡く透ける光が暗い部屋を照らすだけ。
かと言って、電気を点けようとすれば君はもっと嫌がった。



『何もなくていいの、照らすものなんか』



この時俺は、君の言った事に対して答えが導けなくて
一人頭の中で葛藤していた。





でも今なら、少しは自分なりに見出だせた気がする。
だから君に少しだけ腹も立つ。



独占欲と曖昧な優しさ。

それは、
太陽が月を照らす独占欲と曖昧な優しさのよう。










「太陽は君…」



月を照らすのは太陽だけ。
それだけで充分。

唯、それだけの糸。
だから少しだけ不安の時は太陽は立腹。

月を独占する優越感と、
何時月が奪われるのではないかという焦燥感。





そんなに
頑張らなくていいのに。

何度訴えかけても、
君は気付きもしない。





「月は…太陽のモノ。変わらずそれは月並」





安心していいよなんて、
優しい言葉を投げ掛ける事も出来ないけど。

少しは休んでもいいよ。
ぐらいは伝えたい。



俺はこんなにも、君が必要。



それは太陽と月のように。










ベッドに今だ眠る君に降り注ぐ、僅かな朝陽を遮るよう

カーテンをもう一度閉め直して、
君の眠る布団に潜り込む。





少しだけ、
月も太陽を照らせるように。



ひっそりと求めて。
君にはまだ、内緒だけど。



いつか、大きく君を思いたい










第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!