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HemLock










君を想うばかり
複雑に入乱れて



空回りする蔦の先

息の根を
君に差し出して。















君は俺の命を奪い、
命を惜しまず―…

























屋上のフェンスに身を委ね



今にも彼女はフェンスを通り抜けてしまいそうに、

ぐったりと佇んでいた。






「落ちないでよ」


「落ちないよ」








一言会話を交わして、彼女はふと微笑む



俺はその笑顔に何度も酔わされてきたけど、

今は焦燥感すら感じる。










どこか、

彼女が消えてしまいそうな



そんな面影がしたから
















「ずっと一緒にいようね」





突然、
彼女はポツリと呟いた



本当にそれは突然の事で、

俺は曖昧な言葉しか思い付かなかったから



「俺は…一緒に居たい」



ただ、思う事を言ったつもりだったのに。






彼女は少し悲しそうな表情で、顔を歪めた。










「ずっとなんて、永遠と言う言葉があるからいけないんだ…」


「え?」


「此処であたしが死んだら…もう永遠なんてないんだよ」








気が付いたら、彼女は錆び付いた不安定のフェンスをよじ登っていて



俺は慌てて彼女の居るフェンスまで駆け付けた。








「あたし…永遠なんて信じたくない」


「どうして…?」


「貴方の命はあたしの永遠。あたしが死んだら…貴方はー…?」










彼女の言って居る事が、分からないようで



分かってしまって…。

























「君の命が絶えるなら、俺の永遠を奪ってから」

























彼女は嬉しそうに微笑むと、俺の方に手を差し出して



空を背に





ゆっくりと

ゆっくりと









落ちていった


















俺が伸ばした手が、彼女の手を触れる事はなかったのに



まるで、
彼女の蔦に絡まった様に






フェンスを通り抜けて

俺は彼女を追いかける様に落ちていった





















それはまるで一時の永遠

君に全てを握られて。











命すら惜しくない



君に奪われるくらいなら。

















あきゅろす。
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