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恋愛鬼ごっこ



貴方の黒い髪が好き。
貴方の怒った時の、鋭い目付も好き。

腕を組んで、溜息を付いた貴方も好き。



ごめんなさい、

こんな事を今考えてるなんて貴方にバレたら。
一層貴方を怒らせてしまう原因になってしまうけれど。





「で、何で生徒会室のカーテンが破けてるわけ?」


正座をするあたしの前に立ちはだかる貴方。

ごめんなさい、
こんな時でも貴方の視線を独り占め出来て、あたしは嬉しい気持ちなのです。


「‥‥‥えへ、愛故に?」

「意味が分からん」


上目遣いで貴方を見つめたら、尽く頭を叩かれた。

ごめんなさい、
ちょっと痛かったけど、貴方に触れられたとあたしの心臓は大喜びしてるのです。



生徒会長である忙しい貴方を困らせるのは嫌だけど。
少しは構って欲しいの。

貴方の役に立ちたいと思ったの。
貴方の傍に居たいと思ったの。


そしたらね、
不器用なあたしは何時も裏目に出ちゃう訳で。



「‥‥追い掛けたら転んだの」


貴方を追い掛けたら、転んでしまったの。
先を歩く貴方の背中を見ていたら、転んでしまったの。


いくら追い掛けても届かない貴方のその視線の先に。
あたしが少しでも映る様に。



「はぁー‥‥追い掛ける必要のある距離なのか?」

「‥‥‥うん、追い掛けても届かない距離」


まるで、終わりのない鬼ごっこしてるみたいだよ。


急におとなしくなったあたしの頭に、温もりが伝わった。
俯いた顔を上げると、そこには微苦笑した寂しそうな貴方。


「お前に一生懸命追い掛けられる相手が…羨ましいな」


あたしに背を向けてしまった貴方がまた、遠く感じた。
行かないでって、咽喉を通っては空気に溶けて…


弱虫なあたし。
意気地無しなあたし。

貴方の腕の袖を引張って、


「いい加減捕まって‥‥また転んでカーテン破いちゃうよ」



ごめんなさい、
今は貴方の顔が見れない。

激しい高鳴りが邪魔をして、沈黙がやけに目立つ。



「‥‥破かれるのは困るなぁ」


あたしの頬に触れる愛し貴方の掌、指に恋焦がれ。
温もりが痛い程陶酔する。


何時まで貴方はそうやって、
あたしを焦らし続けるの?



「‥もっ‥捕まれ、馬鹿!」


馬鹿って、言ったあたしが一番馬鹿なんだろうね。

貴方を押し倒して、ちょっと強引に接吻を奪って。
驚いた顔した貴方も素敵だと、思う余裕はなかったけど‥‥


「俺‥‥捕まった?」

「っ馬鹿、馬鹿!」


妖しく笑う貴方には付いていけません。
それでもあたしは本能で追い掛けてしまうの。


貴方の胸板から退こうとすれば、今度は貴方があたしを押し倒す。
唇に温もりを感じて、貴方の前髪が鼻を擽る。



心地良い微睡み、
高鳴りの息苦しさ。

卑劣な音を立てて、
只管に互いを貪るの。



「‥しょうがないからカーテンは許してやるよ」


漸く離れた唇から、貴方は耳元で囁いた。
理由が分からないとあたしが首を傾げると、貴方はまた妖しく笑うの。


「俺の為って考えれば‥‥悪くないだろ?」



己惚れも、
その自信過剰も

あたしの高鳴りを増す原動力となるだけ。



「自惚れるな」

「好きな女に押し倒されたら自分に自信も出て来るよ」

「っ馬鹿ー!」



振り上げた腕は軽々と貴方に捕まって、


‥‥‥ねぇ、

鬼ごっこはもう
終わりにしていいんだよね?










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あきゅろす。
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