Graduation
後ろを振り返れば、優しく微笑む貴方が居てくれた。
そしてあたしは、
黒板消しを捨てた。
貴方の名前すら消えてしまいそうで、恐かった。
頭の中から薄れて行く貴方の面影が、悲しかった。
貴方と過ごしたこの教室にさよならを‥‥‥
あたしには、重過ぎた。
『さよなら』と交わす友の声も耳に入らず、
黒板に書かれた貴方の名前をずっと見ていた。
ねぇ、
貴方は此所に居たんだよ。
あたしはそれを、
確かめてるんだよ。
それでも、
それでもね
確かめきれなくて
貴方の座っていた椅子に座っても、冷たいだけで。
どうしたら、
薄れて行く黒板の貴方の名前、残せるかな。
薄れて行く心の中の温もり、抱き続けてられるかな。
後ろを振り返れば、誰も居ない廊下が続いていた。
そしてあたしは、
黒板消しを捨てて
あたしを捨てて。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!