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Get out of the Rain

signs of rain




















「何してるの?」


「急に雨降ってきて…傘無くって…雨宿り?」


「なんで疑問形なんだよ」





人気の無いバス停に、彼女はビショビショの状態でベンチに座って居た。





夏服の制服は薄くって、雨に濡れたせいで身体の線がハッキリと見える。



思わず見入ってしまった俺に、彼女は不思議そうに覗き込む。








「ばっ…!近寄んなっ…」


「うわぁ…酷っ」





反射的に何故か俺は彼女のおでこに手を押し当てて

熱くなった顔を思いっきり彼女から逸らす。





「取りあえずこれで拭けよ…風邪ひくだろ」



部活で使う予定だった大きめのタオルを彼女に放り投げると

彼女は一瞬悪そうな顔をしつつ、俺の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。





「うん、ありがと」


「おう」










身体を拭き始めた彼女の隣りに座ると、少しだけ肩が触れて

彼女の方をちらりと見ると、彼女は顔にタオルを押し当てたままピクリとも動かない。





「何やってんの?死ぬから離しなさいって」


「っぷはぁあ」





押し当てていた彼女の細い手首を握って顔から引き離す。



深めの呼吸をして、彼女はまた嬉しそうに微笑んだ。




「ん、君の匂がする」


「はぁ?何それ…」


「いい匂だよ?」


「そういう意味じゃなくてさぁ…」





思わぬ彼女の言葉に俺の心臓は激しく脈を打ち始める。





「いつも思うんだよね、すごくいい匂がするの」


「そりゃぁどうも。ただ汗臭いだけだと思うんだけどなぁ」


「…そうかもしんない」


「えっ…?!」








嘘だよ、そう悪戯に笑う彼女は、雨に透通りそうに霞んで見えた。



近くにいるのに、遠い距離を感じるような。










「遠いなぁ…」





思わず呟いていた俺を横目に、彼女は少し目を見開いて

また、柔らかく微笑む。





「とっても近いよ?」


「…なんだか分かって言ってるのかよ?」





相変わらず笑みを絶やさないで、彼女は知ったように言う。



そしたらなんだか、

俺の気も知らないで、なんて少し頭にきたのが口調に出てしまった。





「ごめ…キツいしね、俺…」


「ん…そんな事ないよ。あたしこそ、無神経だったね」





思わず顔を逸らしてしまった俺の両頬に手を当てて、

目線が彼女と合う。



彼女は微笑んでいるけど、

その笑みはどこか悲しそうで、今にも泣き出してしまいそうで…





ちくり と、
心臓に痛さが走る。








「遠いね…距離は近いのに、届かないんだもん」


「…ーそうかもしれない」


「そういう事だよ」





彼女が呟く言葉に、ただ頷く事しか出来ない。





「言葉にしなくたって…って逃げてる自分もいるの」


「…どういう事?」


「あたしは…強くはなれないから」





俺の頭の中が可笑しくなりそうまで、

彼女の紡ぐ言葉も
壊れそうな笑みも

雨に霞んでいるのか、何霞んでいるのか…
極限でー…。















「俺は…馬鹿だから、君が何を思おうと…」













ただ、

好き。















ひたすら、

好き。




















そう君に告げて、
自己満足するように君を胸に抱き締める。








君の顔を窺う事は出来なかったけど、

この時君の肩は震えてた。





もしかしたら、雨の冷たさのせいだったのかもしれないけど





愛しいと、感じたから。








「同じだよ…あたしだって」







不意に聞こえた彼女声に、



成す術もなく、
ひたすら、ひたすら





雨のやまぬバス停で















君を抱き締めて。










意味分からん




あきゅろす。
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