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Liar

















「好きじゃない」





そう繰り返して、



繰り返して、自分に言い聞かせる様にまた





繰り返して。

























ホントは。





嘘でしょ。








『好きじゃない』なんて。

























「おはよう」


「おはよう」





教室の前でただ、『おはよう』って挨拶しただけなのに


貴方の香りを追う様に、意識は全て貴方に集中。



貴方の声を聞き逃さない為、全ての感覚は全開で。















夕暮れに染まる学校に、静けさが漂う独りの時間。



何も考えたくない時、
ふいに、無にかえる時



あたしは椅子に座って、窓から頭を擡げる。





窓枠に首を預けて、上を見る。

いつもの空が反転して、けれどもいつもと変わらない空があって。








それは今にも落ちてしまいそうな感覚で。



目を瞑ればそこがどこだか分からなくなる程、

心地が良いと感じる。
けど、















「なにやってんの?見てるこっちがハラハラする」





忘れも出来ないその声に、身体は正直に答えてしまう。



心臓は高鳴り始めて、
手には汗が滲む。








「マジやめろって」





何も言わないあたしにしびれをきらしたのか、

彼の気配が段々とあたしに近付いて来る。





「近寄んないで」


「はぁ?」





思わず言ってしまったその言葉に、あたしは彼の顔を見るわけでもなく

同じ姿勢のまま平然を装おうとする。





「意味わかんねぇよ」


「近寄ったら落ちるから」


「嫌だ。近寄るし落ちるな」





表情は伺えないけど、彼の声は確かにイライラとしてきていて。

あたしに近付く歩みを止めない。





「我儘だわ」


「結構。俺は元々我儘だ」


「‥‥‥傲慢、詐欺」





いつもの笑顔とは違った、彼の苛ついた表情があたしの目の前にあった。



柔らかく靡く彼の前髪があたしの鼻を擽る。





綺麗すぎて、何も言えない



心臓が高鳴って、上手く言葉吐き出せない








「お前こそ、詐欺」


「何言ってんの?」





思わぬ彼の言葉に一瞬椅子がぐらついて、

椅子から落ちそうになったあたしの身体を彼は素早く抱き留めた。





「何時も明るいフりして、実は目茶苦茶暗い子だろ。お前」


「…そのまま貴方に返すわ。それより離して…」


「それも却下。離さない」








あたしの事なんてお構いなしで、ホント我儘。





今あたしの前で笑う彼は、



いつも皆に振り撒く優しい笑顔の彼じゃなくて、

妖しく笑う影の彼。










「好きだろ?」


「好きじゃない」


「俺は知ってる」


「何も知らないくせに」





何も知らないくせに。

あたしはあんたを好きじゃない





そう、
言い聞かせてきたのに



何もかもが崩れて行く。










ふいに、
全てを見せてしまう貴方に

あたしは全てを奪われる。















「君だけだよ、俺を知ってるのは」


「それはどうも。でもね、貴方が思ってる程あたしは知らないわ」


「なら、これから知ってゆけばいい」








知ってゆけばいいなんて、嘘でしょう。



あたしが知りたくて知りたくてうずうずしているのを、

貴方は笑いながら知っている















廊下ですれ違う時、



時折見せる、
貴方の妖しい笑み





あたしは
魅せられていたのだから。











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