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DiS─トガオイビト─ side-A
1-3
(面倒な事になったな……)

 どうしてあそこを歩いていたのか、キリルはとてつもない後悔を感じていた。ひょんな事からハイドを行動を共にする事になってしまい、更に「俺の親友を助けに行くぞ」と勝手に行動を決められてしまうという有り様だ。

 隙をついて離れようかと考えたが、ハイドは緊張感というのが無くなったのかずっと話しかけてくるのでそれは難しい事だった。

 今までの話しの内容は、ハイドが属しているレジスタンスの事やこれから助けに行くという親友の事が大半で、キリルは自分には関係のない話しだと思っていた。

「そういえば…お前本当にレジスタンスじゃないのか?」とハイドが問いかけた。

「お前に関係ないだろ」

「あぁ〜もう! 冷てぇな。教えてくれたっていいだろ? “友達”なんだし」

「……」

 ハイドの“友達”発言でキリルは眉をひそめた。が、ハイドはその表情に気づいてないのか更に話しを続ける。

「…まぁいいや。後で教えてもらうからよ。…しっかし…どこに行ったんだよアイツ…」

 ハイドは忙しなく左右に首を動かし、回りを伺っていた。そんな様子をキリルは冷静に見つめている。
 しばらくしても探す気配が無いキリルを見かねたのかハイドは小さく溜め息をつく。

「頼むからお前も探してくれよ〜」

「顔も知らないのに探せる訳がないだろう」

「それはフィーリングで何とかなるだろ……って、あぁ!!」

 ハイドの突然の大声にキリルはまた眉をひそめた。本当にやかましい。

「……何だ」

「ハイド。ハイド・オークレイだ」

「……は?」

「名前だよ名前! あちゃ〜すっかり教えるの忘れてたー……あ、気軽に呼び捨てで良いぜ。んで、お前の名前は?」

 キリルはただ──呆れた。彼は本当に馬鹿だ。確信した。
 名前を教えるべきか悩んだが、いつまでも「お前」はあまり良いものでは無いので名乗る事にした。

「…キリル・トゥドルナ」

「キリル……ちょっと変わってんな」

「別にいいだろ……」

 そうして二人で会話をしながら移動している時だった。

 突撃キリルは立ち止まり背中の銃剣に手をかけた。キリルの行動に流石のハイドも真剣な表情になる。自然に声量も下がる。

「……どうした?」

「…そこの路地裏に気配がある」

「マジかよ…」

 ハイドも腰の剣に手をかける。

 しばらくすると小さな足音がしてきた。ゆっくりとした足取りである。

 どうやら一人では無いようだ。この足音は明らかに二人以上のものだった。

「……どうする?」ハイドが視線だけをキリルに向けて尋ねた。

「この足音だと…たぶん三人だ。明らかにこっちの方が不利だ」

「それじゃあ…」

「行くぞ」

 キリルとハイドは駆け出した。足音から離れるように角を曲がって狭めの路地裏に入った。

 後ろからは何も聞こえなかった。













「本当によろしいんですか?」

 黒服の男が、上司である男に話しかけた。
 上司は同じく黒服を身に纏っていたが、存在感は別格であった。

「任務はレジスタンスを壊滅させる事です。ガキを殺す事ではありません」

 表情を変えずに、抑揚があまり無い声が発せられた。

「しかし……」

「任務以外の事はしたくないのです。無駄なので」

 上司が部下を睨みつけると、恐怖を感じ部下はそれ以上何も言わなくなった。

「ミハイル様」上司──ミハイルを読んだのはもう一人の部下だ。

「あれは大丈夫でしょうか」

「心配いりません。何故なら──」

 ミハイルの顔に笑みが──人を嘲笑う表情が浮かんだ。

「人間が一番大切にするのは、己ですから」

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