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DiS─トガオイビト─ side-A
prologue
 あの日、僕はそんなに道草をしなかった。ただ、長い木の棒を見つけて前に見た物語の英雄の真似をして棒を振り回して一人遊びをしていただけだ。

 そして日が沈み、いつものように木の棒をそこらに投げ捨て、走って家に帰った。

 いつものように、「ただいま」と言って玄関を開けると……

 父さんと母さんが「おかえり」と言って迎えてくれる……


 筈だった。


 父さんと母さんの変わりに迎えてくれたのは、黒を身に纏った人達だった。

 父さんと母さんは、




 全身を血で染め、床に倒れていた。ピクリとも、動かなかった。


 ドウシテ……?オキテヨ。ボク、カエッテキタヨ。ネェ……。

 声を出そうとした。だけど、唇はうまく動かなくて、喉からは掠れた音しか出なくて。

「この家のガキか?」

 上から声が聞こえて、僕は顔を上に動かした。
 目の前には黒を纏った男の人がいた。笑っていたけど……嫌な気分になる笑顔だった。

「お前も死ぬか? ん?」

 そう言うと、男の人は手に持っていた何かを、僕の頭に押し付けた。

 それが何なのかはわからなかった。押し付けられた物は、少し温かかった。

 僕は……何も考える事が出来ず、ただ……体を震わせていた。その内、目から涙が流れてきた。

 そんな様子を見た男の人は、笑みを大きくし、僕の頭に押し付けていた物を退かした。

 そして、

 僕のお腹を力加減をせずに蹴った。

 僕は衝撃で床に転がり、すごい痛みでうずくまった。息が、うまく出来なかった。だんだん、周りがぼんやりとしてはっきりと見えなくなってきて……。


「おい、行くぞ」

「子供はどうなさいますか?」

 別の男の人が僕を蹴った男の人に話しかけていた。

「放っておけ。どうせガキは無力だ。何も出来やしない」


 それが、目の前が真っ暗になる前に聞いた最後の言葉だった。










 あれは、今から十二年前……僕が六歳の時だった。


 両親は体に銃の弾丸を数発撃ち込まれ、死んだ。あれから僕は両親の友人だと言う夫婦に引き取られ、育った。

 その人達はよく言っていた。

 僕は変わってしまった、と。

 確かに以前と比べれば感情が無くなった事は自覚している。だが……そんな事はどうでもいい。


 今の僕の心に有るのは、復讐心だけだ。

 最早、復讐の為に生きていると言っても良い。 両親を殺し……僕を蹴ったあの男の顔と不快な笑みは、鮮明に思い出せる。


 ──奴に復讐を。


 ただの遊び道具の木の棒を持っていた手は、人を殺せる銃剣を持つようになっていた。




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あきゅろす。
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