竜ノ誓約者
<2>
* * *
「いいか〜新人?一人で勝手に突っ走るなよ?気ぃ引き締めて…」
「それ何回目でっか?」
バレスタのとある街道で、カカブポルク──馬に似ているが全身は毛に覆われ体格はそれより大きくて足が短く、力持ちで体力がとてもある温厚な動物─が荷車を引いていた。
御者台にはバレスタでは珍しい黒色の髪とえんじ色の目の青年─アーデスが手に持っている手綱でカカブポルクを操りながら前方を注意深く見ていた。
背中には大剣を背負い、腰には二本のククリを提げている。
荷車の中には独特な訛りを喋る橙色の短髪に細目の青年─イワンと茶色の髪と目の筋肉質の男─ハッシュ、それとまだ顔に幼さが残る、オリーブの髪と青い目の少年─レオナルドが座っている。
そしてそれぞれ──イワンは肩から提げている鞄にカタールが入った鞘を取り付けておりハッシュの側には戦斧が、レオナルドは鞘に入った剣を抱えていた。
彼らは、民衆、道行く旅人や商人を護衛する傭兵の集団──『自由シームルグ傭兵団』に所属する団員達なのだ。
今は依頼人が居るバレスタの港町・コルシカへ向かっている最中である。
「何回か言っておかないと忘れちまうだろ?」
「んな鳥頭じゃないんや。一回言ったらわかるっちゅーに。なぁレオ?」
「あ、はい…」
レオナルドはイワンの問いかけに戸惑いながら答えた。
「ハッシュ、あんさんとちごぅてレオはおつむの出来が良いんやから心配しなさんな〜」
「んだとぉ!?」
馬鹿にするようにケラケラと笑うイワンに怒り出したハッシュ。そんな様子を聴覚で確認したアーデスは軽く溜め息をつく。
そんな光景を見てレオナルドは笑みを浮かべて楽しいんでいた。
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