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竜ノ誓約者
<4>
 二人が驚いている様子を気にもせず、続けてタシギは客人──ロイにヴァイスとセーナの事を紹介した。
 紹介を聞き終えたロイは残念そうに、あ〜あ、と呟くと大きく息を吐いて体の中の煙を吐き出す。顔を背け、三人にはかからないように考慮していた。

「このまま『謎のお兄さん』として去ろうかと思ってたんだけどな」

「……まだ言うか」

 タシギは手を動かしながら溜め息をつく。

「お前が団長ぉ? ……全ッ然見えねぇんだけど」

 ヴァイスはタシギが言った事を信じようとはせずに疑いの目を向ける。それに気づいたロイはヴァイスを鼻で笑った。

「人を見た目で判断すんなよ、ガキ」

「ガキ……ッ!?」

 子供呼ばわりされた事に腹を立てたヴァイスは立ち上がってロイに突っかかろうとしたが、その様子に慌てたセーナがヴァイスを宥めながら話題を変えようと少々早口でロイに話しかけた。

「レ、レオは元気ですか?」

「あぁ、真面目によく働いてくれてるよ。今日は護衛デビューしたし」

 セーナの質問に返事をしたロイ。言葉は至って普通だが、その表情は不満げな顔を向けるヴァイスが目に入っている為か、馬鹿にしているようにニヤニヤと笑みを浮かべていた。

「なんだ、もう護衛の仕事やらせたのか」

 乳鉢に別の薬草を加えつつタシギが話しに加わる。

「最初は迷ったけどな。まぁ本人の意志を尊重しといた」

「……護衛のお仕事って危険なんですか?」

 タシギとロイのやり取りを見て急に不安げな表情を浮かべるセーナ。

「なぁに、腕の良い奴らが一緒だし、それに今回はフランネルに行くだけだからな。心配ない……」

「フランネルに行くには“陰りの森”を抜けなきゃなんねぇだろ。最近あそこ盗賊が出るらしいな」

 その言葉を聞いた途端にセーナの不安が濃くなる。それを感じたロイは呆れた顔を浮かべると軽くタシギの頭を叩いた。

「んな不安にさせるよーな事言ってどーすんだよお前」

「事実だろうが」

 頭を叩かれた事が気に食わなかったのかタシギは眉をひそめた。

「そうだけどよ。……まぁ心配すんなセーナちゃん。ちゃんとあいつらには言っといてあるから」

「はい……」

 セーナはそう言って笑みを浮かべたがまだ不安は拭えないようだ。

 すると、どうやらタシギが薬を作り終えたらしく用意した空の容器に出来た薬を詰めていた。
「なぁセーナ? これ使ってて親父さんの腰の痛み無くなっていたか?」

「塗った後は痛みは無くなったみたいですけど……何日か後には戻っちゃって……」

「そうか……」

 タシギは考え込んだが、しばらくしてロイを一瞥すると何かを思いついたようだった。突然立ち上がり、二階へと上がっていった。が、そう時間もかからずに手に小さめの紙を何枚かと、透明な液体が入った瓶、それに変わった形のペンのようなものを持っていた。

 ヴァイスは何なのかわからない為に首を傾げたがセーナは見覚えがあるらしく、あっ、と小さく声を上げた。
 一方、ロイはそれらが目に入った途端、表情が一変した──何だか、面倒な事に巻き込まれた時に浮かべる表情のようだ。

「ちょうど良い。“書け”」

 元の席に座ったのとほぼ同時にタシギはそう言うと手に持っていた物をロイに差し出した。

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