Novel
mirror.
自分の事が大嫌いなウルの悩みをグリがうまいこと取り払う話。
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グリムジョー。
なんで俺は、こんなにも醜いのか?
絶望の涙の跡のような、目の下の線
「虚無」を象徴するように穿たれた、首の下の孔
俺は自分の姿なんて大嫌いだ。
どこまでも黒と白
まるで俺の存在自体が「生」を拒絶しているように。
俺にあるのは瞳の緑だけ。
それが、俺の唯一の色。
嫌気がさすんだ
こんな俺の姿に。
そんな俺でもお前は愛してくれるのか?
グリムジョーはキョトンとして言った。
「お前、難しい言葉ばっか遣うからアタマ追いつかねー。
もっかい言ってくれよ」
俺は嫌になって、立ち去ろうと踵を返した。
言うんじゃなかった。
後悔しながらドアノブを掴んだ時、
背後に気配。
たくましい腕が後ろから俺を捕まえる。
「!?なにをする・・・ッグリムジョー、はなせ、」
「よっと」
「!!」
横抱きにされ、連れ戻される。
ベッドに座ったグリムジョーの膝に座らせられ、暴れる俺。
「こらガキ、じっとしてろ」
そんな俺の抵抗もグリムジョーの力であっさりと封じられ。
俺の腹に後ろから手を回し、グリムジョーは俺を落ち着けることに成功した。
「・・・ん、もう・・・ッ///」
「ほら」
そういってグリムジョーと俺の前にひょいと出されたのは、手鏡。
「・・・見てみろよ、ウルキオラ」
穏やかに口元を緩めて言うグリムジョー。
俺はとっさに体ごと目を逸らした。
「ウール。ほら」
「・・・ッ!嫌だ」
いやいやと首を振る俺の顔を、半ば無理やり鏡のほうに戻すと、
グリムジョーは優しい声で話し出した。
「見てみろよ、ウル。お前の顔はどんな美女よりもキレイだぜ。
でっかくて綺麗な色した目も・・・今にも食っちまいたいぐれぇなんだぞ。」
俺は抵抗する力を緩めて、グリムジョーの声に耳をすましてしまう。
「鼻も耳もこんなにちっちゃくて・・・
唇もほら、こんなに柔らかくてマシュマロみてえだ」
つい、鏡を見てしまった。
鏡には、俺とその後ろにグリムジョーが映っている。
グリムジョーは俺の目元や頬をやさしく触りながら、言葉を紡ぐ。
「俺はこの姿のウルキオラが大好きだ。
この顔を、ありのままのお前の姿を愛してる。
この顔じゃねぇお前なんて俺の大好きなウルキオラじゃねぇんだ」
「・・・。ぐりむじょ・・・」
「ほら、目の他にも色があるじゃねぇか。
今お前のほっぺ、キレーな桜色」
「ぁ・・・///これは・・・ッ」
グリムジョーはくすり、と笑った。
「な、だから虚無の象徴じゃねぇよ、お前には心臓がある、
感情がある、血の色がある、俺と同じで」
「・・・。」
「・・・ウル」
「・・・」
「あいしてる」
グリムジョーは俺の顔のいたるところにそっとキスを落とした。
グリムジョーが好きだという、この顔。
だいすきなグリムジョーが大好きな、この顔。
だったら、俺も少しは好きになれるかな。
ちゃんと今度から、鏡を見て向き合えるといいな。
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グリは馬鹿に見えて、ウルの複雑な悩みを取り払うのが上手だったり。
気づかぬうちに、ウルの心はグリに満たされているといいな・・・
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