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Novel
You and You

なんでこうなったかって。
分からないけど。


とりあえず、グリムジョーが二人いた。





「なぁ・・・今起こってることっておかしいよな」

「細かい事は気にするな。面白いのだからそれでいいだろう」

「イヤよかねぇだろ。どうなってんだよこれ」


「・・・っせーな、邪魔すんなよ」



「・・・・・・」

「・・・・・・」

「誰か。コイツどうにかして。今すぐ」

「何を言っている。お前自身だろう」

「俺じゃない。顔は俺だけど俺じゃない」


認めない。
俺の刀が逃げ出して、俺のカッコでうろついてるなんて。



「いい加減認めろ。現にお前の刀が鞘だけになっているだろう」

「・・・俺はこんな・・・変態じゃない!」


ビシッと指差して叫ぶグリムジョー。

そこには、ウルキオラの尻をなでこなでこしながら平然と立つ、
解放姿のグリムジョーがいたのだった。



腰まで伸びた水浅葱の髪、
伸びた爪、尻尾、耳。


姿は違うが、声も体型もまさにグリムジョーそのままだ。

天然故に思考回路が柔軟なのか、
ウルキオラはさして気にもせずグリムジョー同士のやり取りを見ている。


「つか、ウルキオラから離れろよ!!」

「別にいいじゃねぇかよ。お前自身なんだからよー」

「だっ・・・駄目だ駄目だ!」


しかし中身は若干の違いがあるようで、
豹王姿のグリムジョーはウルキオラに対しての態度に余裕(?)があるようだ。


ウルキオラは同一人物同士の言い争いをどこか楽しそうに眺めていた。



事の発端という発端も無い。
本当に突然の出来事だった。

グリムジョーの刀が鞘だけになっている事に気づき本人が探していた所、
ウルキオラと出くわしたはいいが。
その傍らにもう一人の自分がいて、パニックになり今に至る。


もう一人のグリムジョー(以下豹王)は、
ウルキオラが自分の恋人である事を理解しているし、
グリムジョーの口調、仕草、全てが同じだ。

もう一人の別人格のグリムジョーというより、
グリムジョーの分身と考えたほうがいいだろう。



「ウルキオラ、行こうぜ」

「ああ」

「ちょっと待った!!普通に帰るな!しかも俺の部屋の方向に!」

「グリムジョーも、早く来い」


なんだかんだと言いくるめられ。





「普通に俺の部屋に入りやがって・・・」

さっそく部屋の主であるグリムジョーのベッドの上に二人して座り、
戯れている豹王とウルキオラ。

獣好きなウルキオラは豹王の耳やら尻尾やらをいじっている。
グリムジョーは既にアウェイだった。



「愛らしい耳をしているな」

豹王の耳をくいくい、と引っ張り、なでなで。
豹王はまるで主人に懐いた猫のようにウルキオラに擦り寄る。

ごろごろと喉を鳴らして。


ウルキオラは豹王を抱き締める。
頭の後ろに手を回し、水浅葱の髪をふわふわと撫でつけた。


豹王は気持ち良さそうにうっとりと目を細め、
尻尾をゆらゆらと左右にゆらしていた。




「・・・ウルキオラ」

地を這うようなグリムジョーの声。

ウルキオラは平然として蚊帳の外だったグリムジョーを見た。
豹王もつられて、若干めんどくさそうに振り返る。


「なんだ、グリムジョー」

「そいつから離れろよ」

「何故」

「いいからっ、離れろ!」


ウルキオラに対して滅多に怒らないグリムジョーだが、
今回は本気のようだ。
その目はどこか寂しそうだった。


「なんだよ、妬いてんのか?自分に」

「う、うるせぇ」


豹王はウルキオラに見えないように、
密かに舌をべぇ、と出した。


(このやろ・・・っ)

グリムジョーは一人で足踏みする。



「とっ、とにかく、てめぇは俺の刀なんだからとっとと俺の腰に戻りやがれ!
ウルキオラにベタベタ触りやがって!」

「グリムジョー、やきもちか?」


なんならお前も撫でてやる、おいで、なんて、
男心を分かっていないウルキオラ。

気分がいいらしく、やきもちやきもちと呟いている。



「こっちに来いグリムジョー。お前も可愛がってやる」

ウルキオラの手がグリムジョーに伸びた所で、
グリムジョーは無意識にその手を振り払っていた。

ウルキオラの目が見開かれる。
グリムジョーは完全にふてて走り去ってしまった。




「ざまぁねぇー・・・ヘタレが」

未だグリムジョーが出て行った扉の方を見ているウルキオラの後ろで、
豹王が頬杖を付きながら言った。


すると、

「!」


何を思ったのか、突然体勢を変え、
瞬く間にウルキオラを組み敷いてしまった。


「なぁ」

「グリムジョー・・・?」

「あんなヘタレやめてさ、俺といいことしよーぜ」

「いいこと?」

「おう。ヘタレとは比べ物になんねぇくらい刺激があるぜ?」


自信満々な豹王。
どうやらグリムジョー本体に負ける気がしないようだ。
力尽くでもウルキオラを自分のものにしたいらしい。


「俺ずっと、アイツの傍で見てきたけどよ、
つまんねぇんだもんよ。微温くて見てらんなくなって」

「俺とグリムジョーの事を?」

「ああ」


それから、少しだけ話をした。

グリムジョーだけど、グリムジョーじゃない豹王。

豹王から見た自分・・・グリムジョーの話。
ウルキオラにとってそれは新鮮だった。



ウルキオラはそれから、少し眠たくなった。
うとうとしてきたので、豹王の胸にもたれかかる。

長い髪を前に持って来ると、枕にするように擦り寄った。
柔らかい。

豹王の高い体温と、柔らかい髪、耳・・・
全てが眠りへと誘うような気がした。



グリムジョーにはこんなに柔らかな髪も無ければ、
心地よい体毛も無い。



豹王はウルキオラの頬をぺろりと舐めた。

「っ、くすぐったい・・・」


くすぐったがりなウルキオラは身をすくめる。
豹王は気を良くして、ウルキオラの鎖骨をぺろぺろと舐め始めた。

「は、はは・・・や、め・・・」


ウルキオラは、豹王と戯れながら、
少し、立ち去ったグリムジョーの事を考えていた。


自分と戯れているのは、グリムジョー自身なのに。
あんなに、苛立つことなんてないのに。



だけど、もし仮にもう一人自分がいたとして、
自分の目の前でグリムジョーと、二人の世界に入ってしまったとして。

そしたら、グリムジョーはもう一人の俺しか、見ないだろうか。
俺じゃない俺に、触れて、笑って、愛の言葉を囁くだろうか。





そんなのは、不愉快だ。




「・・・何・・・考えてんだよ」

豹王の声でハッとした。
不機嫌そうにウルキオラを見ている。
ウルキオラの考えている事が、大体解っているようだ。


「こんな時でも、ヘタレの心配か?」

「・・・。」



ウルキオラは、起き上がって、
豹王の頬に触れた。

「・・・、」

「グリムジョー・・・」


俺が、どうしてグリムジョーの事が好きか、お前には分かるか?



「・・・・・・」

「俺は、好きだ・・・グリムジョーが・・・
どうしようもなく馬鹿な所と、単細胞な所と、
慎重に行動することを知らない所と、
・・・俺のことになると、他の物が見えなくなる所が」

「・・・だから、なんだ」

「ああやって・・・自分にまで嫉妬する所も」

「だからなんだよ」

「お前も、グリムジョーだ。
俺はグリムジョーじゃなくては、駄目だ。
だけど・・・そのグリムジョーが二人いるなら・・・
俺は、どっちもいらない」



豹王は、しばらく黙っていた。
ウルキオラの手が、豹王の頬から離れる。


「・・・ちっ」


豹王は、小さく舌打ちした後、
少しずつ、その姿を透過させていった。


「あ・・・」


眩しい光に包まれる豹王は。
不機嫌そうな顔だけど、少し寂しそうで。



ウルキオラが手を伸ばし、その光を掴もうとすると。
豹王は、完全に消えてしまった。




今まであった事が嘘だったかのように、
グリムジョーの部屋にあったのはウルキオラの存在だけだった。


ただ、さっきまで豹王がいて、戯れたベッドの上に、
グリムジョーの斬魄刀がある事だけが、
数秒前の豹王の存在を証明していた。






「ウルキオラ?」


風の吹く砂漠で、グリムジョーを見つけた。
機嫌は直っているように見えた。

ウルキオラが豹王といない事に不思議そうな顔をする。


「ったく、いつまでも遊んでんじゃねぇよ」


ウルキオラに近づいて、そこである事に気づいた。



胸に大事そうに抱えられた斬魄刀。


いつもどおり無愛想に、だけど少し惜しむように。
「返す」と、一言。


斬魄刀と一緒に胸に抱きついてきたウルキオラ。


驚きながらも、抱き締めると、
ウルキオラが小さく言った。




「・・・一人しかいないお前が好きだ・・・」



胸の斬魄刀を、そっと抱き締めて。


何故、突然豹王が現れたのか。
それは豹王にしか分からない。

ただ、最近触れ合う機会が少なくなった二人の事を、
お互いの存在が当たり前になりすぎてしまった事を、
心配していたのではないかとウルキオラはそう思った。


あくまでこれは、ウルキオラの考えだが。



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美桜様、リクエストありがとうございました!!
なんかもう・・・長らくお待たせしたにも関わらず
期待はずれな作品で申し訳ないですほんと。

6666ヒットという奇跡的な数字を踏んでいただき、
「パングリと戯れるウルに嫉妬するグリ」とのリクエスト。

もうその時点でさすが美桜様!!と思いましたね。
最高に萌えるじゃないか!!

・・・だったのですが、
私の文章力ではやはり萌えには程遠かったようです・・・(-ゝ-)

でも書く時間はとても楽しかったです!!
またの機会にリクエストして頂けると管理人として幸いです。

それではリクエストありがとうございました〜!!

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