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Novel
white Snow,milky You



「雪だ」


ウルキオラが部屋の窓を開けて身を乗り出した。
雑誌を読んでいた俺は身を震わせる。

「うっ・・・寒ッ。閉めろよ」

「やだ」


なんて自己中な奴。


暖房の入った俺の部屋に、作られた粉雪が舞い込む。
せっかく充満していた暖かい空気がさらわれていく。


ウルキオラの小さな背中が、なんだか楽しそうに見えた。




冬は嫌いだ。
体が思うように動かなくなる。
すぐに暖かいところに逃げ込んで体を小さくしてしまう。

ああ、何故主は季節を造ったのか。


「・・・。」


ふと、振り向いたウルキオラと目があった。

寒くて思わず誰かの体温に縋りたくなるのをこらえ、
平然を装って雑誌を読む。

指先が、少しだけ震えた。



「・・・寒いのか」

そんな俺の頑張りも虚しく、ウルキオラにはお見通し。
可哀相だからと窓を閉めようとした。



「いい、開けてろ」

男というのは、格好付けるために変なやせ我慢をする生き物だ。
意地張って、そんなことを言っている俺。


「無茶はするな。猫は寒さに弱いのだから。
凍えて死んでしまっても知らんぞ?」

「猫じゃねぇし死なねぇし」


ウルキオラが、ちょっとバカにするように口の端を吊り上げた。



窓の外の雪。
嬉々と身を乗り出す恋人。

雪のような肌が景色と溶け込んで、
それは一枚の絵のように見えた。



少しだけ。
ほんの少しだけ見惚れてたいから、

もう少しだけ。
寒さも我慢しようと思った。




「・・・猫は、コタツで丸くなっていろ」


そう言って、窓は閉めずに再び景色を眺めるウルキオラ。
でも少しだけ、全開だった窓をそろりと閉めていた。
これが奴の気遣いだ。



可愛いなぁ。
それで全部許してしまう俺は単純すぎるのだろうか。



「グリ、雪合戦をしようか」

外を眺めながら、ウルキオラは言った。
独り言のように。


「雪は冬しか降らないからな。また、しばらく見られなくなるだろう?」

「嫌だ。寒ィもん」

「じゃあノイトラでも誘ってみるか・・・」

「しょうがねぇから俺が一緒に行ってやる」

「単純馬鹿」



でも、やっぱり寒い。


ついに我慢できなくなって、
立ち上がってウルキオラのもとに近づいた。



後ろから、そっと抱きしめると。
濡れたように艶やかな黒髪が少し、揺れた。



「・・・やはり、寒いのだな」

「・・・。」

「俺なんかに引っ付いても、暖かくないぞ」

「・・・いいんだ、これで」


抱きしめた細すぎる体は冷たくて、逆に俺の体温を奪っていく。
だけど、こうしていたくて。

ウルキオラの背中から伝わる鼓動だけが、暖かいように思えた。


薄い肩に顎を置いて、
一緒に雪を見てみた。


綺麗。



らしくない感想。

だけど、白いものって、一番綺麗だと思った。


「雪、きれいだろう」

「・・・ああ」

「グリだるま、作りに行こうか」

「グリだるま?」

「目の釣りあがった、猫耳の生えた雪だるまだ」

「へぇ・・・」



ふとウルキオラがくるりと振り返って、
俺の体を見回した。


「・・・なんだよ?」

「ぐりちゃん」

「は?」


ウルキオラがジーーーーーっと見ているのは、
なんだか俺の大事な所のような気がして。


「どこ見てんだ」

「ぐりちゃん」

「ワケわかんね・・・」


こんなときにウルキオラったら、
唐突なんだ。


明らかに、うん。
俺の息子を見てるよな。

それってかなり変な気分。

あ、もしかしてぐりちゃんって。
俺の其れの、名前だったりして。



「ぐりちゃん、いつも頑張ってくれてありがとー」

「Σぶふっッ!!?」


盛大に唾を吐き出して「汚い」と言われた。

だってそりゃ、無いだろうよ。


「空気読めよバカ野郎。ぶっこわし」


窓をパターン!と閉め、
ウルキオラを後ろから抱っこして窓の前から退場させた。


「どこにいくのか?」


大して抵抗もしないまま、ウルキオラは言った。


「雪合戦しに。お前のツラに何かをぶん投げたくなった」

「手袋と、マフラーを持って行け」

「はいはい」

「グリムジョー。俺はおんぶのほうがいい」

「・・・はいはい」



冬は、まだまだ長い。





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下ネタ御免。

今難産のお話の気晴らしにと思って書きました。
うちのウルさんは、やっぱりちょっと変わり者ですよね。

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