Novel
1000回目のキスをください。
バカップルで甘々なだけなお話。
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暖かい。
身を寄せ合って、
潜り込んだ、
少し狭いベッドの中。
ほう、と遠くで梟の声がする。
「グリムジョー・・・」
「ん?」
すき。
寝言のようにふと、零れた声。
すき、だなんて。
今更分かりきった事でも。
やっぱり、嬉しい。
ウルキオラが自分を好きだなんて自覚してる。
好きじゃなければ今こうして、ベッドで絡み合ったりなんかしない。
分かってるさ、だけど。
こうして時々言われると、
自分は愛されてるんだと。
そして愛しているんだと思える。
ウルキオラの言葉は甘い毒のように。
グリムジョーを溶かす。
ウルキオラも、俺の色の中に融ければいいのに。
そう思った。
「・・・俺も、好きだ。ウルキオラ・・・」
ウルキオラが、グリムジョーの腕に絡めていた腕を解いて。
首に回して。
じっと見つめてきた。
しばらく見詰め合ってから。
その瞳に吸い込まれるように顔を近づけて、
グリムジョーは薄い唇に自分のそれを寄せる。
ちゅう、と音を立てて唇に当たったのは、
柔らかい、薄いそれではなかった。
目を開ける。
「・・・なんだよ?キスさせろ」
ウルキオラが自分の顔の前に手の平をやっていた。
いつもなら甘んじて受け入れられていたから、
内心、ちょっと焦るグリムジョー。
肝心のウルキオラはなんだか意味ありげな表情。
「グリムジョー、よく聞け」
「・・・はい」
俺の口元を手で覆ったまま、話しだす。
「これは、すごく重要な問題なんだ」
「・・・はァ・・・?」
またワケのわかんねぇことを。
慣れたグリムジョーはまたか、とため息。
「あと一回で、1000回になるんだ」
主語がなくて、わからない。
「1000回って・・・何が」
ウルキオラは頬をほんのり赤く染め、言った。
「・・・キスの・・・数が」
「あ?キス?」
「そう・・・さっき廊下でしたのが999回目。
さっきお前がしようとしたのが1000回目になるとこだった」
え、と固まるグリムジョー。
「・・・お前もしかして、今までずっと数えてたのか!!?」
「・・・ん。」
照れくさそうにするウルキオラ。
なんだ、意外とロマンチックなことするんだな、と
自分まで恥ずかしくなったグリムジョー。
「1000回目は、大切にしろ」
「はは、オンナみてぇ」
わかったよ、と。
額と額をこっつんこさせて、
グリムジョーはささやいた。
「愛してる。ずっと、大切にするぜ?」
「ん・・・///」
「次、お前の番」
「・・・・・・。」
考えても、ありきたりな言葉しか思いつかない。
もちろんそれは全て本音だけど、
自分が言うには何か違うようで。
「好き。それしか、無い」
不器用な、それでも真っ直ぐな。
自分なりの言葉を送りたい。
それから、ゆっくりと唇を近づけて。
触れるだけの長い長い、
1000回目の、キスをした。
ちゅ、と小さなリップ音をたてて唇が離れると、
グリムジョーは突然笑った。
「なんだ」
「いや、実はな・・・残念なお知らせがあるんだ」
「?・・・なにかあったのか?」
へへ、と照れくさく笑ってから、
「せっかく頑張って数えただろうが、
実は、1000回じゃねぇんだよ」
と。
「何故だ?」
「お前が寝てる間に1万回はしてる」
「・・・、」
馬鹿。
しばらくして俯きながらそう返すウルキオラ。
グリムジョーはその小さな頭を抱きしめた。
「・・・それヌキにしてまだ1000回しかしてねぇんだな」
「・・・。」
「これから、その10倍、いや100倍・・・
どれだけでもしてやるよ」
「ん。」
照れているのか、ウルキオラの返事はそっけない。
「俺達が死ぬまでに、あと何回できるかな」
「馬鹿。死んでも・・・ずっと、ずっとだ」
「・・・はは、そうだな」
今日もあなたのくちづけを数えます。
この身が朽ちても、そう。
ずっとずっと、永遠に。
私の唇は、あなたのもの。
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