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Novel
触れて、
眠れないウルの話。甘。

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目は暗闇にすっかり慣れてしまった。



あれから何時間経っただろうか。
数時間前はこの部屋は明るくて、話し声で賑やかだったのに。

今はしんとしていて暗い。


時計を見る。
もうすぐ3時になりそうだった。


俺は寝なければと焦るのもやめた。



明日はきっとクマだらけだろう。
グリムジョーに心配されるだろうか。

はあ、と心の中でため息をついて、
寝返りを打った。




隣には、グリムジョーの普段より幼い寝顔。
恋人なら普通抱き合って寝たりするんだろうが、
照れくさいので俺はそういうことをあまり強請らなかった。
それに、グリムジョーなら「女々しい」とか言いそうだから・・・。


それにしても、よく寝てる。
何の夢を見ているのだろう・・・。
俺が出ているといいな、なんてまた女々しいだろうか。




こういうことは、よくあった。
俺の抱えてる悩みのひとつ・・・不眠症。
どうしても夜になると孤独感に襲われる。
何に対する孤独感かその正体は定かではないが。


なんとなく・・・怖い。
心を持たない自分が誰だか、分からなくなったり。
ときには、何のために戦うのか・・・殺すのか、考えて頭から離れなかったり。

昔からだった。
グリムジョーと付き合っている今でも、変わらない。
むしろ考えることが多くなったり。



俺は心が無いのに、何でグリムジョーと付き合っている?
こいつが「すき」だって気持ちが沸いてくる?

「気持ち」とは、「心」ではないのか?


それとも、こんなことを思う俺は破面として欠損品なのだろうか。



こんな感じで朝まで考え込む。
もちろん疲れはどんどん蓄積されていくから、だるい。

不眠が続いて倒れたことも少なくない。






でもまあ。

こうしてグリムジョーの寝顔を見られるだけで、いいんじゃないか。
見ていて飽きないし、落ち着く。
疲れも少しくらいマシにはなる。
それでいいんじゃないか。







--------スルッ




「・・・・・・?」


突然グリムジョーの手が俺の後頭部に回った。
そのまま引き寄せられ、
俺はグリムジョーの鎖骨のあたりに顔を埋める体勢に。


体が熱くなる。



こいつ・・・寝てるくせに・・・


「・・・いつまで起きてる気だー?」

「ぇ・・・」

グリムジョーの突然の呆れたような声に、俺は驚いた。

「ちゃんと寝ねぇと、お肌に悪いぞ?」



グリムジョーは寝ぼけている様子もない。


「お前・・・いつから・・・」

「ずっと起きてたぜ。誰かさんがいつまでたってもガサゴソガサゴソ、
うるさくて寝てらんねぇ」

「ぁ・・・すまな・・・い」


グリムジョーの奴、ずっと起きてたのか。
驚いた・・・。


「何考えてんだよ。俺にも言えないことか?」

「・・・そんなんでは・・・」

「じゃー何だ?」



俺は困ってしまった。
グリムジョーが心配してくれているのに、
これといった理由が無いから。


俺がしばらく黙っているとグリムジョーははぁ、とため息をついて、
「おまえって案外繊細なのな」と言った。

「・・・。」

「おら」

「!」


グリムジョーが、腕を出して俺の顔の前にもってきた。
頭を乗せるように促してくる。

「・・・い、いい」

「いーから。乗せろ」

「おまえの腕が疲れてしまう・・・」

「いーんだよ、お前のアタマちいせぇから」

「・・・。」



俺はおそるおそる、すっかり熱くなってしまった頬を
グリムジョーの腕に乗せた。


「いい子だ」


グリムジョーが、優しく髪を梳いてくれる。




不思議だ。

あんなに眠れなかったのに、
これだけでもう、ウトウトとしてくる。


心地良くて・・・




子供にそうするように、
胸をトン・・・トン・・・と優しく叩かれた。


もう、だめだ・・・

ねむい・・




クス・・・

グリムジョーが、そんな俺の様子を見て微笑む。



それに睨み返すような気力もなく・・・




「明日は任務が入ってねぇから、遅くまで寝てような」

「・・・ん・・・」




優しい手つき。

首の下に穿たれた穴が、
塞がるような・・・そんな優しい感覚。



「おやすみ、ウル」



薄れゆく意識の中。


瞼になにか柔らかいものを感じた・・・気がした。







グリムジョー、


俺はやっぱり、欠損品なのかもしれない。




だってこんなに「好き」が溢れて・・・
とまらないんだ・・・。





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あきゅろす。
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