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美人で可愛くて…



不愉快だ…!!



いつもより眉間の皺を深め、不機嫌極まりない様子でずかずかと歩く深紅の髪の青年――アッシュ。
彼がここまで不機嫌なのにはある理由があった。
さらさらとした絹糸のような髪を揺らし、ずかずかとしながらも堂々たる風貌で歩くアッシュ。
服はいつものオラクルの服ではなく散歩する程度に着れるラフな格好。彼の引き締まった細い体のラインが嫌という程象られている。
極めつけに今の彼はオールバックではなく髪を降ろした状態。不機嫌に眉を寄せていようが長い前髪に隠れてちょっとやそっとではそれが見えることはない。

目立つ赤い髪に麗しいまでに美しい姿。そんな彼が今の格好では当然誰もが一度はこちらを振り向く訳で…



「ねぇねぇ!そこの赤い髪の君!!」

(…またか)



本日何度目かになる呼び声に更に不機嫌さを増した。
ただでさえ女顔負けの美しいこの顔は自然と男をうんざりなまでに引き寄せる。
村などの小さな場所では若い者が少ない為か(まぁ、代わりにおっさんに多少声を掛けられるが…)あまりこのような出来事に遭遇することはない。

が、少し大きな街へ行けばたちまち自分の顔に引き付けられた馬鹿野郎共が自分に声を掛け逃げられないようにと周りを囲む。
いつもは服装や男らしいオールバックが助けてか声を掛けられることは…ある時はあるが、あまりない。
が、今はその救済の格好(?)ではない為、ここぞとばかりに男が寄ってくるのだ。これが現在アッシュを苛々させている種である。

――そう長々と考えて居れば、やはり逃げられないようにと自分を3〜4人の男達が取り囲んだ。


「うわぁ〜!ちょー美人っvv」


イラッ…


「今一人?彼氏とかいる??」


イライラ…


「暇なら俺達と遊ぼうよvv」


イライライライライライラ…


「絶対退屈させないからさぁ♪」


「―――待て。先に言っておくが俺は男だ」



苛々する思考をなんとか理性で押さえ付けアッシュは最重要点をぴしゃりと男達に言い渡す。
自分はそんな女顔か?あ?言ってみろやゴルァオーラを全身から解き放ち、何度目かになるかも分からない苛立ちの睨みを効かせた。
こうすれば退廷の男達は自分が男だと知ってショックのあまり帰路へと歩みを進める。が、厄介なのが『あ、俺男でも全然構わないっスよ』という何処で頭ぶつけて来たんだ現実見ろと言いたくなる男だ。そういう奴等に限ってしつこく誘ってくる。


「え?男?マジで?」

「ぅわあ〜ちょっとショック…」

「あ〜…でも連れ歩いてるだけでも自慢になりそうだし」

「あ、俺男でも全然構わないっスよ」

(何処で頭ぶつけて来やがった現実見ろッ!!)


思わず心の中で突っ込んだアッシュ。
他の男達もその発言に「マジ?」と疑問を寄せているが、残念ながら彼等は後者側の人間だったらしい。
話が纏まった途端予想どおり誘い方がしつこくなった。予想どおり過ぎてもはや怒りだけでなく虚しさまで湧き上がる。


……プチンッ



「いい加減にしやがれ屑共がああぁぁああ!!!」



アッシュは本日何度目かになるアルバート流剣術(肉弾のみ)を街中で披露した。






(たくっ、どいつもこいつも…)


はぁ…と無意識に溜め息が漏れる。
何が嬉しくて同性にここまでモテなければならないのか。自分はそんなに女顔なのか。
誰かにそれを否定して欲しいが肯定されたら逆に怖いので胸のうちに留めておくことにする。
トレーニングメニューを増やして一日でも早くマッチョマンになってやろうかとアッシュはヴァンが聞いたら卒倒しそうな目標まで立てていた。



「ねぇ!そこの赤い髪の子v」


ピクリ…



またしても誰かに掛けられた声。
いっそのことこの時点で俺は男だと暴露しながら蹴り飛ばしてやろうかとアッシュは振り向く。
が、声を掛けられたのは自分ではなかった。


「君可愛いねぇ〜vv名前なんて言うの?」

「一緒にぶらぶらしない?」


数十メートル離れた場所で始まったナンパ。
声を掛けられた相手を見れば、朱色の髪に翡翠の瞳、幼さが残る自分とよく似た顔が見えた。


(レプリカじゃねぇか!)


その人物は見間違えるはずがないアッシュのレプリカ――ルークである。
ルークは声を掛けてきた男達に何処か苛々しているように見える。


「…悪ぃけど仲間(特にガイ)に知らない人には着いて行くなって言われてるから」

「あ〜分かる!でもさぁ、誰だって初めは知らない人じゃん」

「俺達とお近づきになってよvv」

「…」


「ねぇねぇ、君彼氏とかいるの?」


「好みのタイプとか教えて欲しいなぁ〜」



プチンッ



「お前等やっぱり…」

「ん?」


後半の言葉に意味を悟り、ルークは予想を肯定に変え…キレた。



「俺は男だ、ぼけええぇぇぇええッ!!!」



ルークは男達に驚く暇も与えずアルバート流剣術(肉弾のみ)を街中で披露した。



「たくっ、どいっつもこいっつも…」

「――レプリカ!」


うんざりしたように溜め息を吐いたルークにアッシュは声を掛ける。
聞き覚えのある声と呼び名にルークは驚きつつも振り返った。


「アッシュ!?何で此処に…」

「俺は暫くここに滞在だ」

「へぇ〜奇遇だな!俺達も暫く此処に留まるんだぁ」

「…ところで、」


アッシュに会えて嬉しいのか愛らしい笑顔を向けるルークに胸の内で可愛い…と呟きながら先程見た自分と似た状況下を思い出す。

あれはどう見ても…


「お前…さっき男にナンパされてなかったか?」

「あ〜…」


見てたの?と言わんばかりに嫌そうな顔をしたルークにやっぱりかと問う。


「俺さ。小さい村ならともかく、ちょっとデっカイ街に行くとたちまち男に囲まれるんだよ」

「…」

「いつもは皆が付いてるから多少は防いで貰ってるけど、たまには一人になりたくて…で、隙をついて皆から離れたら比べ物にならないくらいナンパされるんだよなぁ〜…」

「…」


「あーもぅ!俺ってそんなに女顔かっつ〜〜のっ!!!!」


頭を押さえてガァーと唸るルークにアッシュはハハハ…目が笑っていない苦笑を漏らす。

やはり自分達は似ている…

完全同位体の称号は伊達ではない…


まさか男にナンパされるのまで一緒だなんて…



叫ぶルークに「安心しろ。俺も似たようなものだと」ようやくこの苦労を理解してくれる奴が現れた喜びにずっと隠していた悩みを打ち明けたアッシュと二人揃って溜め息を吐くのだった。




「ねぇねぇ、そこの赤い髪の子達!俺らとダブルデートでも…」

「「俺は男だああぁぁぁ――――っ!!!!」」




END.


赤毛はみんなに愛されれば良いを体言してみました(間違った解釈)
ルークは可愛い。アッシュは美人。この設定?が前サイトで割と好評でしたのでこれからも続けて行きたいと思います^^

取り敢えず赤毛はペタペタしてれば良い(笑)



20101201


あきゅろす。
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