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好きなものは好き





これは『彼』と付き合い始めて数ヶ月経った、ある日の話…。






『好きなものは好き』






「おいしいー♪」

カオルと付き合い始めて数回目のデートの今日。誘ってくれたファミレスでルナはステーキを頬張りながら思った感想を口にした。

注文したステーキは580円という破格の値段に比べ、ソースと良いジューシーで柔らかなお肉と良い文句なしに美味しい。

ミートスパゲティーをフォークに取り、カオルは満足そうに微笑む彼女に同じく笑顔で返す。


「ちょっと前に家族で食べに来たんだが、気に入って貰えて良かった」

「うん!この値段でこの味は凄い!今度シャアラ達にも紹介しないと!」

「お前はこの店の宣伝屋かよ」

「だって本当に美味しいんだもん!それに学生にも優しいし!」


興奮したように話すルナ。カオルは嬉しそうに…いや、実際嬉しいのだろう。始終口元には普段の寡黙な態度からは想像出来ない程の柔らかな笑顔が浮かばれている。

ハワードとメノリは連れて来るなよ?と笑いながら、カオルはスパゲティーの最後の一口を頬張った。



(〜〜っこれも美味しぃvv)


ステーキと一緒に付いてきたジャガバタを口に含み、ルナはそれはそれは至福な時を過ごしていた。
あまりの美味しさに体が自然と味わうように動き、いつもよりスローペースで咀嚼する。

料理や値段だけじゃない。カントリーチックな店の内部や店員さんの雰囲気も良いと、何から何までルナ好みだ。



(カオルに感謝しないとね)



私がこのお店を知る事が出来たのは、カオルが此処に連れて来てくれたお陰なんだから…。

ジャガバタをしっかり味わってからルナは視線をステーキから再び彼に戻した。



途端、思考を支配したのは感謝ではなく疑問。



先程までスパゲティーを食べながらも、その視線の殆どをルナに向けていたカオルだが、今その瞳は別の方向を向いている。
惚気で申し訳ないが、彼は食事をしている間もずっとルナを見つめていた。ルナもその自覚はある。が、スパゲティーが空になっているにも関わらず今の視線は他に向かれていた。


窓…?違う。もうちょっと下…一点をじっと見つめて―――。




「……………煤I?」




一瞬、目を疑った。


数秒のうちに何度も彼と『そこ』を見比べる。でも間違いない!カオルは『そこ』をじっと見てる!!イメージは湧かないけど見てる!!イメージ湧かないけどっ!!

あまりの予想外の出来事に思わず思考が絡まりあたふたとしてしまうルナ。
その不自然な動きにさえ気付かない程見入ってしまう理由とは何か…?雰囲気の良いファミレス内部であるこの場でそれに該当するのは一つしかないと思う。

特に恐いモノがある訳でもないのに、ルナは恐る恐るといった様子で無駄に勇気を出しながら口を開いた。





「……カオルもしかして……、デザート食べたいの??」


「煤I!??」



聞いた途端に素早く視線を天井に向けたカオル。「そんなもの見てねぇよ」と主張せんばかりのその行動が逆に肯定だと直感する。

先程までカオルの視線は傍に置いてある店のメニューに向けられていた。それだけなら大して不思議ではない。

が………。




『当店イチ押し!チョコレートケーキ140円!!〜濃厚な甘さが女性や子供を中心に大人気〜』




置いてあったのはお店の自慢なんだろうチョコレートケーキをデカデカと宣伝しているメニュー看板。
いくら鈍感で天然だと言われるルナでもこれだけ大きく宣伝している食べ物をじっと見られれば察するのは容易い。
それぐらい分かり易過ぎた行動にも関わらず、彼は未だ何でもないとでも言わんばかりに天井を見ている。


躍起にしか見えないその様子にルナは苦笑した。



「食べれば良いじゃない」

「…」

「じっと見ちゃうくらい好きなんでしょ?チョコレート」

「………〜〜〜っ///////;」


そこまで言って彼はようやく折れる。頭をガシガシかきながら恥ずかしそうに顔をルナへ…。
ゆっくりとした動きの果てに見えたその顔は今まで見たことがないくらい真っ赤に色を染めていて、余程恥ずかしいのか若干瞳が潤んでいる。



「お、男が甘い物好きなんて…おかしいだろ?//////」



何度か口ごもりながらも搾り出した言葉。

それはルナも目を疑った真実。



「何で?おかしくないわ。確かにカオルに甘い物好きなイメージ湧かなかったけど」

「……嫌味か」

「アハハ、本当に意外だったのよ。寧ろ甘い物苦手だと思ってたもの。知ってたら持って来るお菓子スナックにしなかったのに〜」


鞄を軽く叩きながら笑うルナ。それはアルミで出来たポテトチップス袋特有の音を奏で、カオルは居心地悪そうに真っ赤になっている頬を掻いた。

同時にすみませーん!とルナは店員を呼ぶ。


「注文追加でチョコレートケーキ一つお願いします」

「煤I?///////;;;」

「かしこまりました、少々お待ち下さい」


行儀良くお辞儀をして去って行く店員の背中を見、真っ赤な顔のまま彼女を見つめたカオル。
あまりにも見ない行動に苦笑しながら、私が頼んだら違和感ないでしょ?と小声で呟く。


カオルは目を見開いた――。








………程なくして届いたチョコレートケーキ。
見た目や頼んだ本人ということからかケーキはルナの目の前に置かれた。が、店員が去ったと同時にそれをそっとカオルの前に移動させる。

ルナに知られるのさえ恥ずかしがったのだ。他の人に知られるのはもっと恥ずかしいに決まってる。
偶然にも店内部から比較的死角となっている現在の席と、さりげなく配慮してくれた彼女にカオルは感謝した。

さぁどうぞと優しく微笑んだルナに…



「……ありがとう」



それはそれは小さな声だったが、ルナにはちゃんと届いたのだった―――。










「…………///////」

「………/////」


ルナよりもスローペースでチョコレートケーキを頬張る度、嬉しそうに顔が緩むカオル。
本当にチョコレート好きなんだなぁ〜vと本日発覚した彼氏の意外過ぎて可愛過ぎる一面に赤面するルナなのでした。





end.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
紗津希:「甘い物が苦手で定着しているカオルが甘い物好きになったら苦手な物は何かな?」

夢:「あー…辛い物とか?んでカオルさんがカレー作ったら甘口カレーになるんだろ?^^」

紗津希:「煤I!!!//////;」


という紗津希ちゃんとの謎の会話から生まれた好物第一位がチョコレートなカオルさんネタ\(^O^)/
激甘党とまではいきませんが、他の味覚に比べたら甘い物が一番好きという設定です。カオルさんをとことんまで赤面させられて幸せで(殴)

他のサヴァイヴサイト様にはないオリジナリティを求めていた『アメジスト』管理人の彼女に、私はこの設定を使わず甘い物苦手なカオルさんで行こうと思ったんですが、「二人で決めた設定じゃん!」と泣き付かれたので当サイトでもそうする事にし(泣いていません)

甘い物が大好きなカオルさんもギャップがあって可愛いと思いますvvこれからも甘党カオルさんをじゃんじゃん出していきたいです^^



20100727



あきゅろす。
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