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理想の女性




好みのタイプ?


そうだな…




すっごい妖艶で、


ウェーブの掛かった長い髪で、


タレ目がなんとも色っぽい、



美人女医ってとこか…?





『理想の女性』





「…世の中うまくいかないモノだな」

「何が?」


引っ越しの為、カオルの部屋の荷物をまとめる手伝いをしていたルナは何かを見付けると同時にクスクス笑い出したカオルに疑問の目を向ける。
何か言う前に口を開いた彼の言葉に首を傾げた。

手招きをされ傍に行けば手に持っていたノートの一ページを見せられる。


「『俺の理想の女』…??」

「昔ルイと学校でこんな話をしててな、口で言うのが嫌でこうやって書いてアイツに見せたんだ」


へぇ〜とまじまじノートを見るルナ。今と変わらないスラリとした文字に、この頃からカオルは字が上手かったんだと感心する。

そんな彼女をカオルはジッ…と見、やっぱりと呟いた。


「このノートに書いてる理想像に何一つ当て嵌まらないなお前」

「そうねー、私に色気なんかこれっぽっちも…ってちょっと!!!」

「妖艶ってよりどちらかと言うとガキくさいし…」

「うっ…!」

「ウェーブなんて無縁のストレートヘアだし…」

「私はパーマ当てたことないんだから当たり前…!!」

「タレ目じゃなくてパッチリ目だし…」

「お母さん似よ!!」

「女医には程遠いな」

「惑星開拓氏ですっ!!」


ただでさえ見た瞬間そう自覚して見ないようにしていたのに、このページを書いた張本人に指摘されると地味にへこんでしまう。
自分の顔が童顔なのを分かっているからこそ色気がないのは百も承知。

なのにカオルはページに書いてある理想とルナを見比べ違いをまだつらつらと言っている。


「〜〜っそんなの前々から気付いてるわよ!!!!」


なおも続ける彼にいい加減切れた。

ルナの顔はまるでいじめられた小学生のように頬は口を結んで膨れ、瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。


「いいわよいいわよ、いつかカオルを見返してやるもの」

「へぇ〜どうやって見返してくれんだ?」



子供のような反応を返すルナを愛おしそうにカオルは見つめる。




「カオルの理想の女性像を全部私に切り替えてやるんだから!!!」




ビシッと人差し指を突き付け、ルナはプンプンと頬を膨らませたまま引っ越しの手伝いに戻る。

それにカオルは微笑む。




子供のような反応、


強気な癖に優しい性格、


仕事に戻る為踵を返すと同時にサラリと揺れた綺麗な髪、



何よりノートの理想に負けたからと言って嘆かず、寧ろ覆そうとする負けず嫌いな可愛いところ。




なぁルナ…気付いてるか…





「ルナ、怒るな」

「…怒ってない」

「せっかく『俺達』の新居に引っ越す為の準備なんだから、むくれてやって欲しくねぇんだよ」

「……一回謝ったら許してあげる」

「はいはい、ごめんなさいでした」





俺の『理想』はとっくにお前。







END.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


理想どおりじゃない方が


理想を覆して好きになって…



なんかすっげー愛してるっぽくね?




20100125



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