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捨てられない10title
09.ありし日の純真
麗らかな春の午後。
あたしたちは街の広場のベンチに座り、久々に何の事件もない穏やかな時間を過ごしていた。

…ってソコ、大概事件の発端や中心人物が何を言うかとか言うんじゃない。

「誰と話してるんだ?」
訝しげに見てるガウリイは無視無視。



ふと視線をやると4歳くらいの女の子と男の子が咲き乱れる花で仲良く遊んでる。

「あの時期の子どもって可愛いわよね〜」
「まぁ子どもは可愛いよな」

女の子は首飾りを完成させたようだ。

「あんた子ども好きそうだもんね」
「そうかもな」

首飾りを身につけ男の子ににっこり微笑んでみせる。

「子どもの世話とか好きそうだし」
「普段誰かさんの世話してるしな」

「なんですってー!!??」

失礼極まりない発言を漏らしたガウリイに掴みかかろうと立ち上りかけたその時。
花のかんむりを作っていた男の子が女の子の頭にそれをのっけると、なんと女の子の頬にキスをした。


………………………………。


いきなりの光景に固まってるあたしのことなんかもちろん気にせず女の子と男の子は幸せそうに笑いあっている。

しばらく呆然とその光景を見つめていたけど、よろよろと再び腰をベンチに落とし、

「こ、子どもって純真っていうかなんていうか…」
全く…見てるこっちが恥ずかしい…。


「なんだお前もしてほしいのか?」
「な゛っ!!??」

とんでもない発言に思わず勢いよく振り返ったその先には。
自分が何を言ったのか分かってないよ〜な普段通りのほほ〜んとしたとぼけた顔。


「……違うわよ、馬鹿…」
真っ赤になってるであろう顔を隠すように背けながら。
聞こえないようにぽつり。

「………子ども扱いしてるくせに」

それが聞こえたのか聞こえなかったのか。
ヤツは口をおもむろに開け、

「言ってくれたら花かんむり作ったのに」

ぶちっ。

「違うわよ、馬鹿ぁぁあああっ!!!!」


麗らかな春の午後。
謎の爆発が起こったことは知らないったら知らないのである。


20090705


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