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捨てられない10title
08.走馬灯になるべき記憶
「リナァァアアアッ!!!」


霞む視界。
傾く景色。

ドサッという音とともにあたしの体が地面へと倒れたのが分かった。


今にも泣きそう。

そんな顔をしたのも束の間、ガウリイはすぐさま残りの敵へと向かって行った。



そう。
あたしたちは戦いの最中だった。
あたしたちにとって大したことのないレッサーデーモンでも魔族は魔族。
ちょっとした油断があたしを切り裂いた。

薄れゆく景色の中あたしは残る力を振り絞り、手を伸ばした。









目に入ったのは天井。
辺りはすでに明るんでいて朝を迎えたことを知る。
あたしは天井へと手を伸ばしていた。


…なんだ夢か。


天井に伸びていた手を所在無げに下ろしつつ頭をひとかき。




たかが夢。
されど夢。

あれは夢などではない。
確かにあった出来事。
例え過去であろうと間違いなくあった現実だ。

残りのレッサーデーモンを人間業とは思えないほどの早さで屠り、引き裂いた自らの服で患部を縛り、応急処置を終えるとガウリイはすぐさまあたしを抱いて街へと駆けた。
そして運良く腕のいい魔法医がいたおかげであたしは一命を取り留めたのだ。
あれからまだ一ヶ月しか経ってない。



温もりを感じ、ふと目を落とすと見慣れた黄金色。

穏やかな寝顔。

夢のせいで負へと向かっていた気持ちを見ているだけで救い出してくれる。



顔をほころばせつつ、その顔にかかった金糸をかきあげすいてやると穏やかな寝顔は幸せそうな笑みを浮かべる。


あの時。
最期だったかもしれない時。
力尽きるのも惜しまず手を伸ばした先には。



いつもあたしを支え、救い出してくれるあんた。

大切な存在。
愛おしい存在。

あんたがいるからあたしは頑張れるんだよ、なんて口が裂けても言えやしないけど。

大切な存在。
世界よりも大事な存在。


最期の時はあんたを想いたい。
あんたと過ごした大切な時間を想いたい。


たくさんの時間を。
もっと。
もっと。
まだまだ足りない。


あたしは今を、そしてこれからを力の限り精一杯生きて、生きて生き抜いていく。
走馬灯となるべきあんたとの日々を記憶に刻みつけるために。


ね、ガウリイ。


「おはよう」


さぁ旅を続けよう。



20090613


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あきゅろす。
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