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そいつは、いつもどこかつらそうな目をしていた。
オレが近づいてもオレの方を見ようとしない。
思わず抱き締めようとするが、そいつは霧になって消えてしまう。
しかし、消えたかと思うと目の前でオレ以外の男の腕の中にいる。
それが無性に腹が立った。
何故オレでは駄目なのか。
何故、そんなに安心した顔をしているのか。
オレの心を掻き乱すそいつが、今目の前にいる。
間にいた邪魔な山賊を斬り捨て、そいつの方へと近づいてみる。
山賊の返り血を浴びたのか、顔や服の至るところが赤く染まっていた。

オレが問いかけてみても表情を崩そうとしていなかったが、周りの死体を見て眉をひそめていた。
こういった光景に慣れていないのだろう。
さらに近づいてみると、思った以上に小さく、顔も幼かった。




名前を聞くと、やはりこの国とは違う、聞き慣れない名前だった。
これで確信した。
真奈はこの国の人間ではない。
何故、どうやってここに来たのか気になったが、本人はよくわかっていなかったようなので聞いても無駄だと思った。
それに、真奈がこの国の人間ではないのなら、こんな所に置き去りにする訳にはいかない。
依頼された村に連れて行こうと考えた。
赤兎も何故か真奈になついている。
馬に乗れないという真奈を上から抱き上げると、真奈はオレにしがみついてきた。
夢とは違い、霧になって消える事はなかった。
それがどこか嬉しかった。
呂布(何だ?何故オレはこんな事を…)


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あきゅろす。
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