5
どうにかしなければ。
それしか真奈の頭にはなかった。
とりあえず、手は動かせるようなのでガッと土を掴みごろつきの顔を目掛けて投げる。
「ぐわっ!!」
目に入ったらしく、ごろつきは両手で目を押さえて悶え苦しんでいる。
その隙に真奈は地面を這いずり、ごろつきから離れる事が出来た。
それに気付いたのか、怒り心頭のごろつきは目を擦りながら真奈の方へ近寄る。
「てめぇ……。嘗めたマネしやがって」
「っ!」
殺気……というものだろうか?
ごろつきの纏う雰囲気が明らかに変わった。
しかし、真奈にとってそれは恐怖を呼ぶものではなかった。
むしろ殺気など……。
何かが真奈の頭に浮かんだ。
しかし、その考えは真奈の中で形とならず消えた。
自らの頭に次に浮かんできた跡部と仁王がそれをさせなかった。
(そうや…。景ちゃんとかが無事か確かめんと……)
だから……
死ぬ訳にはいかない。
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