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FATE【6万キリリク】:二人の大将の休暇【完】
B†夜の会† 3頁
 神世界では人間世界と違い、果物の実は自由にとれるが、動物を殺し食材として扱うことは禁じられている。言い換えれば、神の力を持っていない動物を一方的に狩ることは、神として望ましくないとみなされる。

 
 王族や貴族、および、高い力を持っている者は、自由に力を扱う為、必要な時に食べ物等を呼び出せる。だが、一般民はそれが出来ない。それで、食材を売る『市場』が必要になる。

 
 肉の食材は各帝国に決まっている場所で集まっている。場所は「眠る地」と呼ばれ、各帝国の王族の下で管理されている。昔の四王の手で、その場所は動物の聖地となり、寿命を完うした動物が自然とここに来る。

 死んだ動物の魂は身体を残し、魂だけは人間世界へ行ったり、神の世界に残ったりし、別の形で生まれ変わる。残っている動物の身体は神の力によって、若さを蘇らせ、新鮮な食材となり、帝国の市場に送る。

 
 食材は各帝国にいる動物が中心となる。水帝国では魚介類が多く、風帝国は鳥類で、炎帝国と土帝国は陸生動物が多い。同盟帝国の間で、食材を交換する市場もある。

 
 フォアナックス大将もワーヤス大将も、強力な力を持つ者。料理を作らなくても、自由に呼び出せる。だが、彼らは子供の時から一般家庭の中で育てられ、自由に物を呼べるのは少佐になってからであるため、料理を『自分で』作ることは習慣となっている。


 軍の中でも、力を戦いの為に保った方が良いという考えがあり、料理を呼び出さない人がほとんど。そのため、料理が上手なフォアナックス大将の家では、部下や軍の友達がよく集まる場所。


 「おおお!!!いい匂い!今日は何だ!」クレース副大将の灰色の瞳が、フォアナックスの家の中のテーブルの上に置いてある料理を美味しそうに見つめ、言った。


 フォアナックスはクレースが部下を呼んできたと思ったが、今彼の友人以外誰も来ていない。土帝国の大将は不思議に思うが、質問しなかった。

 「前日、土のイノシシの肉をもらったから、お前がいきなり来て、簡単に焼いてみただけだ。大したことじゃない」とフォアナックスが答えた。
 

 食材となった肉の名前を聞き、クレース副大将が目を大きく開き、叫んだ。

 「あの幻の『土のイノシシ』か!?どうやって手に入れたんだ!?」

 土のイノシシ。寿命は千年。数も少なく、珍しい動物。すなわち、何百年に一度しか得られない食材。誰も欲しがる幻の食材。

 「食べるか食べぬか?食べるならさっさと座って食べろ」だが、フォアナックス大将は質問を答える気が無かったため、質問を返し、親友を叱った。



 すると、クレース副大将は、フォアナックス大将の方を叩き、告げる。

 「おい、どうした?こんなに冷たいのはお前らしくない。最近、『フォアナックス大将が恐くなった』という噂を部下から聞いた。もしかして、これからあの天敵の『ワーヤス大将様』と戦うことでピリピリしているか?」

 クレース副大将は冗談のような喋り方反面、声は真剣であった。


図星であった・・・


今朝から、嫌、ずっとワーヤス大将と身体を交わした日から、フォアナックス大将の心は落ち着かない。


大好きな本を読んでいる間でも、何度も水帝国の大将の顔が浮かんできた。


 戦略に関しては二日後に王が説明してくれる。もし彼がワーヤス大将と戦わなければならない立場になれば、彼はワーヤス大将を殺せるかと自分に何度も問いかける。


この手で水帝国の身体に剣を貫けるか・・・


想像するだけで、フォアナックスはこぶしを強く握る。


『帝国の為なら彼方を殺す!』そう思ったのに・・・心が納得できないようである。


 友人の様子を見たクレース副大将が、自分が言ったことが図星であったと分かった。

 考え込んでいるフォアナックス大将に、クレースが相手の顎を下から突き上げて、軽く殴った。

 痛みは無いけれど、夢中になったフォアナックス大将をびっくりさせた。


 「お前は昔からずっと『あの人』のようになりたいと目指してきた。もし今回、機会が手に入れたら、相手をがっかりさせるな。あの水帝国の大将を『この一生』お前のことを忘れぬぐらいにしてやれ!」


 何千年も付き合ってきた為、クレース副大将は友人の水帝国の大将に対する想いをよく知っている。これはクレースなりの励まし方である。今日いきなり訪問した理由もその為である。


 すると、フォアナックス大将は友人を顔に軽く殴り返し、ほっとした笑顔で言う。

 「分かっている!因みに、お前の部下はどこだ?」フォアナックスは話の課題を返した。

 「お前と二人で話したいと言ったから、もうすぐ来ると思う。お?来たかも?」外から力の気配を感じたクレースは玄関へ向かう。


 その時に、フォアナックス大将は友人の名を呼び、振り向けた副大将に言う。

 「ありがとう、クレース」
 
 返事の代わりに、礼をもらった側は右目を瞬いた。


友人の言葉で土帝国の大将の不安と混乱が飛び出された・・・


もう迷わぬ・・・もし彼方と戦うことになれば、がっかりさせないようにしてみせる!


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