FATE【6万キリリク】:二人の大将の休暇【完】
A†昼のゆかり† 3頁
母に香袋を供えると、ワーヤス大将は隣に並んだ父の墓に向けた。水帝国の大将の表情が悲しくなり、告げる。
「お父さん、お久しぶりです。お元気ですか?チャナック王はこの神世界から去りました。今、レイサック王子様が王になり、私はお傍で務めています。お父さんの言葉を守れず、すみませんでした」
チャナック前水王が亡くなってから、墓を参る時間が無かった。今日、ワーヤス大将は初めて自ら事実を父に伝える。
最初兵になることに反対していた父親は、神の世界から去る前に残った言葉。
『もし兵になりたいのなら、命をかけても王を必ず守る』という。
王を守れぬ自分は大将の立場から降りようとしたが、チャナック王の遺言とレイサック新王の力になりたい心で、ワーヤス大将は大将になり続けた。
「あと五日間、我が帝国は炎と土帝国と開戦します」ワーヤス大将は待っている戦争のことを語る。
今回の戦はこれまでの戦とは違う。
レイサック新水王とラーカイン炎王の力の差は、部下の中で彼は誰よりも知っている。
今回はダメかもしれぬ・・・
水帝国が全滅するかもしれぬ・・・
自覚しながらも、ワーヤスは諦めぬ・・・
希望を失わなければ、必ず『道』がある・・・
ワーヤスは父の墓の前に、二つの青い杯と水帝国の大将の酒の容器を取り出し、酒を二つの杯になみなみと注ぎ、「乾杯」と言い、一気に飲んだ。
その時に頭に浮かんだのはあの日に敵であるフォアナックスと杯を変わった時。
<<『我が帝国の為に』>>この言葉は今でも響き続ける。
ワーヤス大将は頭を左右に振り、その映像を頭から削除しようとした。その後、水帝国の大将はしばらく両親のお墓の前に座り、飲んでいた。
太陽は西の空へと動き、沈む時間が近付いてきた。ワーヤス大将は
「お父さん、次回にもっとたくさん良い酒を持ってきます」と告げ、青い杯を置いたまま、両親の墓に向け、頭を下げた。その場から去る時に、彼は心の中に言う。
(もし次回があるならば・・・)
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