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FATE【6万キリリク】:二人の大将の休暇【完】
A†昼のゆかり† 2頁
 「『大将殿』は止めましょう。お久しぶりです。連絡も無く突然訪問してすみません。『リリス』お叔母さん」ワーヤスは優しく微笑んで、頭を下げた。


 「はい、ワーヤス様。では、どうぞ中に入って下さい」リリスと呼ばれた老人が扉を大きく開いた。


 だが、ワーヤスはその誘いを断る。

 「大丈夫です。先に『アレ』をもらいたいので、後でまたゆっくり話しましょう」


 リリスは水帝国の大将の目的をすぐにわかった。彼女は「少々お待ちください。ただいま持ってきます」と言い、別荘の中に戻った。


 
 ワーヤス大将は別荘の周りを眺める。雰囲気も風景も、何も変わっていないとワーヤスは考える。


 その時に、玄関の扉が開き、老人は小さな箱を持ってきて、ワーヤス大将に渡し、言う。

 「ワーヤス様が来ると知らなくて、今これしかないです」リリスは申し訳ないような顔をし、お詫びをする。

 
 「大丈夫です。連絡も無くて来た私の方が悪いですから。行ってきます。終わったら、一緒に御飯を食べましょう」ワーヤスは小さな箱を手にし、感謝の言葉を言い、その別荘から近い山へ向かう。



  一方、土帝国で、フォアナックス大将は朝練が終わると、家の中で読書をした。子供の時から、読書が大好きで、本から得られた知識はこれまで戦争にも非常に役に立った。


 そのため、大将になる前に、強い力を持っている彼はよく戦略役に回された。唯一ワーヤス大将と真正面から戦ったのは少佐の時だけであった。
 

 フォアナックスにとって、休暇の昼間は貴重な読書の時間。独りで家の前で本を読む。その間に、身体も精神的にも和やかになり、大地である土の力も身体に染み込んでいく。


 水帝国の南部にある小さな山。さっきの老人の家から歩き、山上までそんなに時間がかからなかった。


 この山は小さいけれど、町全体の風景が見られる。山上で巨大な木があり、その下には二つの墓が並んでいる。


 ワーヤス大将はその墓に近付き、跪き、告げる。


 「お久しぶりです。お父さん、お母さん」


 ワーヤス大将は水帝国の南部でごく普通の家庭に生まれた。これまでの大将や副大将はすくなとも、貴族または有名な兵士の家族で生まれたのは一般的であった。


 ワーヤス大将は軍に入りたいと言った時に、反対していた両親。彼らは息子と一緒に静かな町に住みたかった。

 「兵の中に入っても役に立たぬ。我が家は兵士の血等持っておらぬじゃ。たとえ力が強いと言われても・・・」ワーヤスの父親の言葉であった。


 ワーヤス大将の父は軍に入ったが、戦場で重い怪我をし、命まで落とさなかったが、その傷で力を使う度に、身体中に激痛を感じる。


 そのため、ワーヤス大将の父は二度と戦場に行けなくなり、自ら軍を出て、この町に来て、彼の母と結婚した。


 父の重い病気とその辛さをよく知っているワーヤス大将だが、彼は兵になることを迷わなかった。

 一番低い二等兵から始め、素早く上へと上がった。息子の意志と努力を見た両親は、兵になることを納得していた。時間の無い彼に嫁を探してもらったのも、両親であった。


 四千年前に父が他界。一人になった母を心配しているワーヤス大将は、家周辺に住んでいるリリスを雇い、母の世話をするように頼んだ。


 そして、二千年前に母は父のところへ去った。ワーヤス大将は箱を出し、その中に花の形の袋がいくつか入っている。水帝国の大将はその袋を取り、母の墓に供える。


 「お母さん、これはお母さんの大好きな香袋ですよ。リリス叔母さんが作ってくれました」


==4月17日更新==


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