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FATE[番外編]:二人の大将【完】
†B二人の触れ合い4頁†
 二人の大将はごくごく酒を飲み、徐々に盛り上がってきた。軍の話を触れずに、お祝いの準備等の話をした。土帝国の大将は棚の上に置いてある絵を見て、家の主に問う。


 「因みに、家族は今日いないか?」


 絵の中には三人の暖かい家族。ワーヤスの鉄紺の長い髪を見ると、その絵は大分前から描かれたと分かる。征服や見た目から恐らくは兵長の時代であろう。


 隣にはとても美しい美人が立ち、二人の真ん中には元気そうな少年がいる。少年の顔はワーヤス大将そっくりで、三人とも満面の笑顔で幸せそうである。



 質問されたワーヤス大将は、杯に入ってある酒を一気に飲み、告げる。

 「もういないんだ。六千前ぐらいから、息子は戦場でなくなって、それを認められない女房は鬱病になり、息子の所へ逝った」

 声だけで判断すると、大事なことではないように話したが、ワーヤス大将は天井を見上げ、夜空を眺める。



 「あ・・・すみません」踏んではいけない話を取り上げてしまったと、フォアナックスが詫びを言った。


 「詫びしなくても良い。昔のことだし。俺は戦士として戦場で死ねるのは何よりの誇りだと思う。女房だけは可愛そうだ」とワーヤスが言う。


 
 私生活について、フォアナックスはワーヤスが既婚以外何も知らなかった。水帝国の大将はこんな残酷な過去を抱えているとは思わなかった。

 どの戦いまで聞く必要はないが、戦場で息子が死んだとは、炎・土帝国同盟との戦いに違いない。

 すなわち、直接でなくても、ワーヤス大将の暖かい家庭を壊したのは、炎帝国の軍と彼が所属している土帝国の軍であるとフォアナックスが思う。



 居間の空気は重くなり、二人が何も言わなかった。沈黙が広がった中、ワーヤス大将は先にそれを破る。

 「にしても、時代が変わるもんだ。今俺水帝国の大将は、フォアナックス土帝国の大将と一緒に飲んでいるんだ。想像することもなかったぞ」ワーヤス大将はこの重い空気を緩和させ、フォアナックスの杯にまた酒を入れた。

 「確かに」と土帝国の大将が言い、注いでもらった酒を一気に飲んだ。


 「そちらはどう?子供は何人いる?」

 今度水帝国の大将は質問する側に代わる。フォアナックスは彼より年下だが、そんなに年が離れていない為、既に結婚しているとは普通のこと。けれど・・・

 「いや、俺には女の運が無い」と残念な顔をしながら答えた土帝国の大将。


 
 ワーヤスはかなり驚いた顔をし、からかうように言う。

 「まさか。フォアナックス大将のような腕も上等で、面も良い戦士が女の運が無いとは思えない。遊びまくったなら、信じるけど」


 「そんなことない。良い面と言えば、ワーヤス大将の方が上と思う」とフォアナックスは答えた。


 酒の力のせいで、いつも冷静なワーヤス大将はもっと喋るようになった。

 「いやいや。俺は少佐になったばかりのあなたを初めて見た時、びっくりした。この面の良い戦士があの噂のフォアナックス少佐かと。特にその藤色の瞳は一度見たら忘れられないと思う。見詰められた女を全員メロメロさせるんだろう?」

 ワーヤス大将にとって初対面は少佐の時代であった。フォアナックス大将は左右に頭を振る。
 
 「いいえ。よく忘れられたよ」短く答えたが、心の中で別の言葉が浮かんだ。

 (あなたに)



 ワーヤス大将はすっかりフォアナックスとの初対面を忘れた。正しく言えば、最初から助けた兵はフォアナックスだと認識していなかった。だが、土帝国の大将にとって初めて出会った日から今でも忘れられぬ。

 
 フォアナックスはワーヤスの杯に酒を注ごうとしたが、大きいな容器の中にはもう何も入っていない。

 「もうないか?ちょっと持ってくる」ワーヤス大将は大将の一つの印である容器を持ち、台所へ向かう。しかし、その部屋から出る前に、彼が止められた。

 「大丈夫。せっかくなので土帝国の酒を味わってみてはいかが?」とフォアナックス大将が誘う。

 「おお。是非」とワーヤス大将はその誘いを受け、元の長椅子に戻った。

 土帝国の酒は四帝国の中で一番だと言われている。土の力で作られた果物等は高級な味を生み出すという。



 賛成をもらったフォアナックス大将の両手から紫色の力が広がった。すると、両手の中から、狼の形をしている紫色の容器が現れた。目の部分には「土大将」と書いてある。

 
 このような物を呼び出す力は、力を持っている者なら、ほとんど出来るだが、外帝国から呼び出すのはかなり強力でないと、各帝国の結界を通せないはず。このようなことが出来ることも一つの強さの証である。

  
 フォアナックス大将はワーヤス大将の杯に酒を入れると、注がれた酒の香が居間に広がる。香だけからでも、かなり上品で強い酒である。

 「はぁ・・・上品の酒だ」一気に全部を飲んだワーヤス大将の顔は一段赤くなった。

 「かなり強いからほどほどに」土帝国の大将は忠告する。

 「前に言わなかったが、俺は酒の事なら負けること一度もない」最初に言わないと思ったことも、酒のせいで自慢話のように言ってしまったワーヤス。


 けれど、土帝国の大将は恐れずに、自信に満ちた声で言い返す。

 「俺も酒なら負けたことが無い。じゃ、これから勝負だ!」


 月は空の真ん中まで来た。深夜が訪ねる。二人の大将は二つの大きい容器に入った酒を飲みきった。

 かなり強いと言いながらも、これほどの量を飲んだのはワーヤス大将にとって、久しぶりである。しかし、ここで負けてはいかぬと思い、隣に座っているフォアナックス大将に告げる。

 「全部終わったな。台所にまだあるから持ってくる」

 けれど、土帝国の大将から何も答えてこなかった。ワーヤス大将の名を呼び、近付いた。


 すると、フォアナックス大将は完全に寝ていることが分かった。水帝国の大将は深い溜め息を付く。

 「だから、言ったんだろう・・・フォアナックス大将寝るなら寝室で寝ろ」


 でも、相手からの反応は無い。完全に失神の状態である。
 
 「・・・たく・・しょうがないな・・・・・敵の大将の家で爆睡する大将はこの四帝国にいるか」とワーヤス大将がもう一度深い息をし、相手を運ぼうとする。

 
 しかし、酔っぱらっているのはフォアナックス大将だけではない。彼もそろそろ限界である。普通なら、ちゃんと鍛えている彼は土帝国の大将を運ぶのは大事なことではないが、今は違う。

 それで部屋まで運ぶ方法は一つ。力を使って運ぶという。けれど、酔っている彼は今力を使うと、もっと酔っぱらってしまう可能性が高い。

 「でもいいか。今日もう寝るし」とワーヤスは自分に言い付け、力を使い、二階の個室までフォアナックスを運んだ。


 逞しい土帝国の大将の身体をベッドに横たわらせ、隣にあるテーブルに酔っ払いに効く香油を置いた。そして、ワーヤスはフォアナックスの無防備な寝顔を見詰め、思う。


紫紺色の短い髪・・・

形の良い顔と唇・・・

そしてその藤色の瞳・・・


 「こんな面をして女の運が無いと思わんが、俺の部下なら女房を探してあげるのに」とワーヤス大将は呟いた。

 
 酔っぱらっている時に力を使ったせいで、ワーヤス大将の意識もそろそろ飛んでいく。水帝国の大将は土帝国の身体に毛布をかけ、自分の部屋に戻る。



 けれど、扉を途中まで開く時に、後ろから扉を押し付けられ、再び閉まった。ワーヤス大将は扉と両手の主の間に囲まれる。


 両手の主は寝ていたはずのフォアナックス土帝国の大将である!



==1月16日更新==

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