[携帯モード] [URL送信]

FATE[番外編]:二人の大将【完】
†B二人の触れ合い3頁†
 フォアナックスから相手になってと言われて、ワーヤスはその言葉の意味を考える。


 土帝国の大将はさっきの彼の質問を否定したから、『闘い』という意味ではなさそう。ならば、どういう意味であろう。


 「どうですか?私の相手になってくれますか?」ワーヤスは答えない為、フォアナックスはもう一度問う。


 「どんな相手によって答えが違うと思います」水帝国の大将は言い返した。


フォアナックスは微笑みながら、告げる。

 「飲む相手になってほしいです。あなたの任務は終わったから大丈夫でしょう?」


 『飲む相手』と聞き、最初にワーヤスは明日のことを考え断りたかったが、相手に恩返す機会はなかなかないと思った。


これまで誰にも教えなかったが、ワーヤス大将の心の中にあの日に助けられてもらったことは、片時も忘れられない。


 それに今日の任務も完了したから、ゆっくり出来ると考え、フォアナックスの誘いを受けた。

 「別に良いですよ」

 「ありがとうございます!では、今夜は剣じゃなく、酒の強さの勝負ですね」フォアナックスは笑いを含んだ顔で言った。


 すると、ワーヤス大将はにっこりした。彼は今まで水帝国軍の中で酒勝負に負けたことは一度もなかったから。


 けれど、わざわざフォアナックスにこの事実を伝えるのも、ただの自慢話に過ぎないと思い、水帝国の大将は言わないことにした。


 
 その後、ワーヤス大将は水帝国の街にある居酒屋ではなく、彼の家へ連れて行った。理由は水帝国の大将は、敵の帝国の大将と一緒に飲む姿を誰にも見られたくないから。


 ワーヤス大将の家は水竜殿からそんなに離れていない。お城から出るときに警備兵は二人の大将が一緒にいることを見て、不思議そうな顔をしたが、お辞儀をして何も言わなかった。



 豪華な水竜殿と違い、居心地の良い二階建ての家である。外の壁は青い宝石で作られ、中には落ち着く茶色の家具がある。

 普段の大将は王からの豪邸をもらうが、ワーヤスはその家を断った。家事のことだけ女中を頼んでいる。


 ワーヤスは家の真ん中にある居間へ連れてきた。この部分だけは二階の天井が無い。長椅子に座って見上げると、屋根が透明石になっており、夜空が見られる。


 二人の大将はまず金色の鎧を外し、中にそれぞれ帝国の色である青と紫の薄い征服を着ている。


 フォアナックスはワーヤスが言った通りに長い椅子に座り、ワーヤス大将は台所へ行き、酒の容器を持ってきた。酒の容器は青い色の竜の形をしており、竜の目には『水大将』という字が書いている。


 どの帝国でも、酒の容器は一つの大将の印である。軍の中では、部下と飲む機会が多いという理由から作られたと言い伝えられた。無論、フォアナックス大将も土帝国の容器を持っている。



 ワーヤス大将は長い机の上に酒の容器を置き、フォアナックス大将の隣に座り込み、言う。


 「帝国の大将としては地味過ぎると思っているでしょう?豪邸に住んでみたけれど、落ち着かないからこの家に戻りました」

 ワーヤスは家の中を検視しているように、周りを隅々まで見ているフォアナックスに言った。

 「いいえ。ワーヤス大将らしいと思っています。王から頂いた豪邸『俺』も返・・う・・失礼しました。居心地良いからつい・・・」雰囲気に飲み込まれた土帝国の大将は、敬語使いを忘れた。


 「いい。『俺』も家で堅苦しい言葉を使いたくないんだ。普通に喋ればよかろう」とワーヤスも敬語を使わないで喋ると、フォアナックス大将は笑顔で頷いた。



 その後、ワーヤス大将は酒を二つの青い杯に入れ、一つを相手にあげる。

 フォアナックス大将は杯をもらい、小さな杯の中を見ると、明日満月になる月が映った。



 「俺と杯を交わす?」フォアナックス大将はからかうように問う。


 「敵と杯を交わす者はこの世にいるか?」ワーヤス大将もその発言を深く考えずに、笑いながら即答した。家にいるせいか、ワーヤス大将はいつもよりゆったりとしている。


 すると、二人が一緒に笑い出した。

 「ならば、敵として杯を交わそう」とフォアナックスが提案し、杯を持っている手を差し伸べた。



 ワーヤス大将も面白そうに自分が持っている杯を差し伸べた。

 「よかろう。敵の誓いでも言うか?」水帝国の大将は面白そうに別案を出した。

 「じゃ、『我が帝国の為に』はどう?」とフォアナックスが言う。



それは何よりも事実・・・

帝国の為だから、お前と戦う・・・


 答えの代わりにワーヤス大将はフォアナックス大将の腕と繋いだ。

 桔梗色の瞳と藤色の瞳が見詰め合いながら、互いに相手の手を引き寄せ、杯に口を付ける。

 「我が帝国のために」二人は誓いを告げ、こくりと飲み込んだ。


縮んだ距離感・・・

こんな近い距離で相手と杯を交わす日が来るとは・・・

二人が想像することすらなかったであろう・・・


同じ『我が帝国』という言葉が響いたけれど・・・

二人の心の中の『帝国』は決して同じモノにはならん・・・


==1月14日更新==


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!