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FATE[番外編]:二人の大将【完】
†B二人の触れ合い2頁†
 レイサック水王を取り戻してから一月が経った。ワーヤス大将は、レイサックの身体の心配がなくなったが、精神的な問題はまだあると考えた。


 いつも微笑んで明るいレイサック王子は、チャナック前王が亡くなってから、言葉も少なくなり、更に今回の件でかなり鬱になった。独りにさせてほしいと彼と側近らに告げ、いつも何を考え込んでいる様子。


(炎帝国で何が起こったんだろう?きっと残酷なことだったはず)ワーヤスはそう考える。


 レイサックの酷い傷痕を見たら、如何に酷く拷問されたか一目瞭然。


 それを心配している間に、突然レイサック水王は『アルと姫の婚礼式を行う。早いければ早いほど良い』と言われた。


 水帝国の大将にとって、これは非常におめでたいこと。

 だが、ワーヤスは嫌な予感を感じた。一つは、水王の焦りすぎた様子。もう一つは、アルタイル風王はカリナ姫に対し、兄妹愛好を持っているけれど、恋仲ではないとワーヤスが思う。


 にしても、式の準備が進んだ。

 忙しい日々に、ワーヤス大将は帝国内と帝国外の貴族の招待状を確認している。大将として彼の担当は軍と関係がある客。水帝国と風帝国は問題がなさそうだが、ワーヤスの頭の中でまだ恩返ししていない相手の顔が浮かんだ。


 「確かに。招待しなければ・・・」水帝国の大将は呟いた。


 今水帝国は炎帝国の植民地。認められなくてもそれは認めざるを得ないこと。このような両帝国の王族の婚礼式は知らせるべきである。


 その後、ワーヤスはレイサックと相談し、最初に新水王は嫌がるような顔をし、時間が欲しいと言ったが、後日に彼を呼び出し、「バーナッドとラーカインの招待状のこと大将に任せる」と命じた。



 帝国の間の王族婚礼はあまりない。特に、二人は王と第一姫の場合は非常に珍しい。


 きっかけは生まれる子供は二つの魂を持つことになるから。二千歳になったら、一つだけ選ばなければならない。更に、上手く支配できなければ、魂が逆流し主を殺す場合もある。


 けれども、ちゃんと世話すれば問題がないはず。それで、立派なアルタイル風王と愛らしいカリナ姫様の場合、その心配がなかろうと両帝国の貴族が思い、チャナック前風王婚約申請を受け取った。

・・・・・・・

 ようやく婚礼式前夜。水帝国街中は賑やかでお祝いの雰囲気である。


 四帝国の中で最も美しい姫君が民にとって誇りである。今夜は誰も眠れないであろう。貴族、側近、風帝国の客も城に到着した。無論、ラーカイン炎王とバーナッド土王も揃った。


 ワーヤス大将は警備兵や見回りなどを確信し、水王の寝室の前でレイサック水王と会った。


 「大将、今夜は家に帰って休んだ方が良い。この間全然休めなかったんだろう?」水王は嬉しそうに微笑みながら告げる。

 
 レイサックのこんな幸せな顔を見るのは久しぶりであった為、ワーヤス大将の顔にも笑みが浮かぶ。家に戻ることについて最初にワーヤスは断ったが、レイサックに「命令だ。今夜帰ってちゃんと休め」と命じられ、嫌ながらも「御意」と答え、水王と別れた。



 しかし、レイサックが寝室に戻る時、開いた扉の中からワーヤス大将はある者の気配を感じた。

 僅かだが、水王の寝室から炎王の気配がある。殺気はないけれど、これは間違いなくラーカイン炎王の気配!!


 けれど、水王は全く何も言わずに、そのまま寝室に入った。レイサックはこの気配感じないと考え難い。もう一つの答えは『感じるけれど、気付かないふりをしている』。



 (もしかして・・・)と思いながらワーヤスはその思いを心の中に閉じ込め、水王の寝室から去った。

・・・・・・


 複雑な気持ちで最後の巡回を見回っているワーヤス大将は、内苑で見覚える人の姿を見かけ、声をかけた。


 「フォアナックス大将、何故そんな浮かばない顔をしていますか?」ワーヤスは相手が今自分より機嫌が悪そうな顔をしており、それが気になって質問した。


 一方、珍しくぼうっとしているフォアナックス大将は、声かけられた相手を見て少し驚いた顔をした。

 「あ、ワ・・ワーヤス大将。巡回の確認ですか?」おかしい様子を誤魔化そうとするように、逆に質問した。


 「今から家に帰るところです。因みに、あなたは土王の傍にいなくても大丈夫ですか?」土帝国の大将の誤魔化しを見通したワーヤスはもう一度問う。
 
 フォアナックスは土帝国の大将。そして、今は敵の帝国。王の傍にいることは当たり前のこと。


 「もしかして、今夜は居なくても良いとか言われたり・・・」言葉に詰まっているフォアナックス大将にワーヤスは答えを推測した。

 
 すると、フォアナックスの顔を見たら、『図星』とワーヤスが思った。


 「失格ですね。敵の帝国にいるのに、要らないと言われるとは・・・」藤色の瞳が悲しそうになった。


 (こんな年になって、泣きそうな顔するな!!)とワーヤスは心の中に喚いた。


 力の強い者ほどあまり年をとらないように見える。それで、二人は人間の三十代後半のような面をしているが、本来、一万歳以上の彼らは、人間なら既に四十代の中高年。



 落ち込んでいるフォアナックスに、ワーヤスは告げる。

 「街へ行けば良いじゃないですか?どうせ今日皆が祝っていますし。水帝国にいる間に土王の身に何もないと思いますし」



 フォアナックス大将は何かを思い付いた顔をし、ワーヤスに聞く。


 「今から家に帰るところと言いましたね。ワーヤス大将、この間の恩返しとしてお願いがあります」



 この間の恩は必ずいつか返すと思っているワーヤスだが、相手からいきなり『恩返し』という話が出ると思わなかった。水帝国の大将は少し躊躇いながら聞く。

 「ここで勝負したいとかと言わないでしょう?そんな暇はないから」


 二人の大将が闘ったら、周りが騒がせてしまう。また、ワーヤスはフォアナックスがあんな無謀なことを考えると思わない。



 すると、フォアナックス大将は左右に顔を振り、藤色の瞳が真っ直ぐ桔梗色の瞳を見詰め、言う。


 「今宵、あなたが私の相手になって下さい」


==1月12日更新==

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