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FATE[番外編]:二人の大将【完】
†B二人の触れ合い1頁†
 八千歳になったワーヤスは、チャナック水王も周りの副大将からも認められ、軍の最高級である『大将』の座を与えられた。


 これまで一万歳以下の者が大将になるのは、非常に珍しいことであった。また、八千歳という若さでワーヤスは四帝国の中で最少年の大将となった。


 ワーヤスは大将になってから五十年が経ち、任務の面では完璧に果たせた。が、ある日、非常に信じがたい報せが水帝国に伝えられる。


【風帝国は土帝国の植民地になる!!】


 誰もそれが嘘だと考えた。むしろ、最近帝国内の混乱が起こった土帝国の方が植民地になるではないかと民が思う。


 強力を持ち、立派なゼファー風王の風帝国はこれまで一度も風帝国を他の帝国に渡した
ことが無い。


 その時にバーナッド新土王の名は四帝国の間の課題になった。ディバー前々土王の謎の死の次に、バーリウス前土王バーナッド新土王の兄がゼファー風王に殺され、風帝国土帝国の関係が悪化し、大戦争がいつの間に起こるか分からなかった。


 しかし、戦争が始まる前に、土帝国の勝利に決まった。戦争で負けたという形ではなく、二王の闘いにより決めたそうである。更に、ゼファー風王はその状態を抵抗せずに、アルタイル嫡子が千歳まで植民地になることを認めたという。


 風帝国で植民地になる誓いの儀式が行われ、四王が全員揃った。無論、四帝国の大将も出席する。


 「ゲレル大将。これはいったい?」ワーヤス水帝国の大将は、いつも一緒に戦っている自分より三千歳年上のゲレル風帝国の大将にすぐ理由を問う。


 「飼い犬が主の手を噛んだからだ」まだ怒りを抑えきれないゲレル大将は歯を食いしばりながら答えた。


 ゼファー風王とバーナッド新土王の関係について詳しいことを知らなかったワーヤスは、ゲレル大将の言葉をよく理解できなかったため、「どういうことですか?」と聞き直した。


 「息子のように可愛がられた犬は、恩を知らずに、罠を掛けやがりお主の帝国を奪ったんだ!」ゲレル大将は怒りに満ちた声で説明した。


 名前を言わなくても、ワーヤスはゲレルが言う犬はバーナッド新土王で、主はゼファー風王のことである。

 
 詳しい事情は今聞かぬ方がよさそうで、ワーヤス大将は他の課題に変えようとする。その時に、ある者に二人の大将に厳しい声を尋ねた。


 「ゲレル大将。言葉に注意した方が良いです。私の我慢も限界がございます」


 ワーヤスはどこかで聞いたことがあった声と思ったら、目の前に現れたのは、フォアナックスであった。

 短い紫紺色の髪と、相変わらず強い意志を表す藤色の瞳。


 しかし、フォアナックスは着ているのはいつもの副大将の銀色の鎧ではなく、大将の地位を意味する金色である。

 ワーヤス大将は初めて知った事実に驚き、桔梗色の目が大きく開いた。


 確かにフォアナックスの手腕は上等である。だが、彼も知っている第一土帝国の副大将カールもいて、カールの年齢と能力は次の土帝国になると予想していた。更に、帝国内混乱も含め、まだ八千歳にもなっていないフォアナックスに大将の座を与えるのは異常である。


 フォアナックスはワーヤスが驚いていると気付き、小さな笑みを浮かびながら、水帝国の大将に言う。


 「ご無沙汰しています。ワーヤス大将」

 最近の土帝国内の様々な異変で、戦で会う機会が少なくなってきた二人。今回の出会いは何年ぶりのことである。


 ワーヤス大将が答える前に、四帝国の大将の中で一番年上のゲレル大将からの言葉が飛び出した。ワーヤスが来る前にゲレル大将はフォアナックスが大将になったことを知っていた。

 「貴様さっき何を言った!?」


 完全にブチ切れた風帝国の大将は、大将の間の礼儀を守るところか、相手を今ここで殺したいところであった。


 一方、一番新大将のフォアナックスは恐れず、冷静に答えた。

 「申し上げた通り、『言葉』に注意下さい。今の状況を悪化させるのは少なくとも、あなたの王はそれを望まぬはずです」

 
 フォアナックスが言った通り、今回の植民地になったことは誰も認めたくない。だが、ゼファー風王の言葉は絶対であった。


 『余のせいでこれ以上民や兵の命を戦争で失いたくない。また、余は負けた』と風王に言われると、ゲレル大将や他の貴族らは、納得したくなくても、民と兵の命を守りたい王の意志を尊敬し、従った。


 ゲレル大将は今彼が何かの問題を起こしたら、王の努力は全て無駄になると判断し、持っている剣を地面に強く刺した後、その場から去った。


 ワーヤス大将はほっとし、溜め息を付き、告げる。


 「あなたも言葉使いの注意が必要でしょう。ゲレル大将は我々より前から大将になられた立派な方からです」


 「王に対し悪口を言う者は許せません。たとえ年上の戦士でもです。それに、あなたより立派な大将がいないと思います」とフォアナックスが語った。


 誉められたワーヤス大将は笑いながら言う。


 「お世辞はよせ。因みに、おめでとうと言いたいところだが、敵が増えるのはおめでたくないから、言うのをやめました」


 長年敵として戦っていたせいか、二人の大将は敵でありながら、個人的にお互いの手腕を認めている。

 また、ここは戦場ではないから、殺し合いはしないが、戦の時は二人が本気で相手を殺し合いになる。


全ては王の為・・・


 「構いません。私も大将になれると思えませんでした。しかし、この状態ならまた暫くあなたと戦えないでしょう。せっかく大将になったのに、少し残念です」フォアナックスは答えた。


 副大将や他の地位と違い、戦場で大将と大将の闘いはいつものことである。

 
 また、風帝国は土帝国の植民地になったことを認めたということは、水帝国と炎帝国の戦に風帝国は手を出せないという。それに、二つの帝国が一つの帝国を攻撃するのは、あまり望ましくない為、土帝国も恐らく水と炎の戦から手を引くであろう。


 「あなたの『願望』はまだ私を倒すことか?」ワーヤスは質問した。大
将になった今でも、相手は全く変わっていない。


 「勿論です」フォアナックスは迷わずにはっきりと答えた。


 「それなら、次回の戦でまた闘いましょう。力尽くまで」とワーヤスが言った。


お互い、個人的には嫌いではぬけれど・・・

愛している帝国の為、王の為なら・・・

何時か相手を殺す日がやってくるであろう・・・

『戦』の『場』で・・・・

・・・・・・・・・

 その後、時間が流れ、アルタイル嫡子が千歳になり、風帝国が解放された。それでも、風と土の帝国の関係はそんなに悪くなかった。

 それで、ワーヤスとフォアナックスの決着はまだつかない。


 一方、水帝国と炎帝国の関係がますます悪化し、レイナレス嫡子と妃がラーカイン炎王に殺され、その次にチャナック水王まで殺された。レイサック新水王の時代に変わったばかりで、水帝国は炎帝国の植民地となった。


 それを認められなかったレイサック新水王は閏儀式でラーカイン炎王と戦った。その結果、新水王は捕虜として炎帝国に攫われた。


 アルタイル風王とワーヤス大将は水王を助ける為に炎帝国へ行った。ワーヤスは大怪我をしながら、レイサック水王を水帝国に連れ戻さなければならない。


 困難な時に手を貸してくるのは、バーナッド土王からの命令を受けたフォアナックス大将であった。


 屈辱ながらやむを得ぬフォアナックスに助けてもらったワーヤス。それが彼にとって、『初めてのこの男に負けた』と思った。


==1月10日更新==

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