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FATE[番外編]:二人の大将【完】
†A二人の少佐3頁†
 無論、ワーヤス少佐は無防備ではなかった為、フォアナックス少佐の剣を避けるのは簡単である。だが、水帝国の少佐は避けることを選ばずに、握っている剣を刺した。


 剣が鎧にこすれる金属音が響いた。二人は剣に力を含めて刺した為、二人の銀色の鎧の右側は壊れ、防御している腕の筋肉が見えるようになった。それに、二人の少佐はお互いに目を丸くした。

 (左利きか!?)
 (左利きか!?)

 二人の少佐は心の中に新たな発見を叫んだ。力はほぼ同じ。年齢はそんなに差はない。更に、二人はまた珍しく左利きの戦士だとは、運命でなければなんといえばよかろう。


 ワーヤスがいつも耳にした噂。『フォアナックス』という手腕の良い戦士が土帝国にいる。

 兵長になった時から、ワーヤスは自分がいつも『記録破り戦士』と呼ばれたが、いつもその後、フォアナックスという名の戦士で記録を破れたという話が耳に入る。

 顔を見れば、年齢は彼とそんなに差が無いはず。また、手腕が上等の上に良い面をしている。特にその自信に満ちた真っ直ぐな藤色の瞳。

 フォアナックスが彼に負ける気はないであろうと水帝国の少佐が思う。けれど、戦場の先輩として、そして、仲間の恨みを晴らさなければならぬ。


 今度、ワーヤスは最初に剣を刺し、フォアナックスもそれを受け、二人は互いの力を耐えながら、剣を交える。

 「私を勝ちたい理由は何です?」ワーヤスが問う。

 フォアナックスの顔に笑みが浮かび、強い力を込めている剣がワーヤスに振りかかる。

 「一つは、少佐としては初めての務めです。そして、もう一つは・・・」

 
 強い力を防御しているワーヤスは後ろから彼を狙って飛んでくる短剣を気付かなかった。その気配を感じる時には、命になる場所を避けられたが、鎧が無い右腕の外側が深く切られ、赤い血が飛び散った。

 フォアナックスは宙に浮かんだ短剣を手の中に呼び戻し、もう一つの理由を語る。

 「あなたを倒すことは私の『願望』です。ずっと」


 「少佐!!!」「ワーヤス少佐!!」見かけた水帝国の兵士が騒がした。

 「騒がすな!こんな傷ぐらい!!!」水帝国の少佐は部下に叫び、敵帝国の少佐に向かって、冷笑しながら言う。


 「なるほど。久々に血を流した。褒めてあげますよ、フォアナックス少佐。ただ、あなたが一つ大事なことを忘れてしまったようで・・・『俺』はワーヤス『水帝国の少佐』だ!」最後にワーヤスはこれまでの丁寧な言葉と違い、強く怒りに満ちた言葉を告げた。

 すると、フォアナックスが握っている短剣から、付いているワーヤスの血が複数の小さな剣のように変わり、土帝国の少佐を攻撃する。

 
 近い距離と突然な攻撃で、防御しきれなかった分の攻撃は、フォアナックスの顔やワーヤス少佐と同じ鎧が無いところの腕を切った。


 「水帝国の者は水を操る力を持っている。自分の血も含めるんだ」ワーヤスの顔に満足しそうな笑みが浮かんだ。


 これはもう一つのワーヤス少佐の『顔』が現れた。ワーヤス少佐はなぜこんな短い時間でここまで登ってきたかというきっかけ。それがこの計算力である。


 全て相手のことを予想し、行動する。もしもこのような最悪な状況でも、自分の利益にひっくり返す。

 
 「ふふ、ハハハ」フォアナックス少佐は大声で笑い出し、喋る。

 「これだから、あなたを倒す価値があります。これでお互い同じ状態になったから、続きをやりましょう!」

 「望むところだ」罠にかかったのに、相手が恐れずに勝負を申し込んでくる相手は、初めてであった。

 二人の少佐は剣を構え、続きの戦いは再び始まる。


しかし、その時に水帝国の軍から大きな叫びが聞こえた!


 「王の中軍です!少佐、王がいらっしゃいます!!!」


 どうやらチャナック水王の中軍は、中佐の軍が全滅された報せが届いたらしく、前軍を助けに来た。


 「こうなったら、私たちの勝負はお預けになります。部下の命を無駄に死なせたくないので、また次の戦でお会いしましょう」

 フォアナックス少佐はそういうと、その場から早く去り、部下に命じる。

 「おい!引け!!引くんだ!!!」

 ワーヤス少佐もフォアナックス少佐を止めなかった。彼にとって敵帝国の少佐の命より、帝国の勝利の方が大事であるから。ワーヤスは自分の仕事に戻り、少佐として務めた。


帝国の勝利は王の勝利により決まること。少佐や大将一人ではない。



 このことは二人の少佐の初めての戦いであった。しかし、その後何千年経っても、二人の勝負はいつも決められない。理由は同じ。


 『自分たちの勝負よりも、帝国の勝利の方が大事』




 そして、時間が流れ、二人の少佐は上位へと登り、大将という位置まで至るまでは、後三千年のことであった。


==1月8日更新==
A二人の少佐(完)

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