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FATE[番外編]:二人の大将【完】
†@二人の初対面†
この話は今から遡り、およそ八千年も前のこと。


帝国の兵隊に入れる年は二千年と決まっている。その時期が来るまでにずっと待っていたフォアナックスは喜んで土帝国の兵隊に参加した。



入ったばかりにも関わらず、手腕の上手さに上の者に目付けられ、一年目の二等兵としては珍しく戦場に送られた。



しかし、楽勝と思った炎帝国と水帝国の戦争は一変厳しい状況となり、フォアナックスが参加している土帝国の支援軍は前兵に行くと命じられた。


当時の水王であるチャナックは戦争の戦略を見事に立てられ、炎・土同盟帝国の軍を抑えられた。


 フォアナックスが気付いたら、彼の十人の部隊は百人の水帝国の軍に囲まれ、逃げ場もなくなった。


 それで、彼と仲間は一つのところを集中し、襲うと考えた。上手くいけば、囲まれている軍の間に穴が空けられ、そこから逃げる作戦であった。



 けれど、一対十という割合が難しい上で、相手の剣の腕も上等である。これは単なる下級の陸軍ではなく、ちゃんと訓練していた軍隊である。


 一人、そして一人、同じ部隊の友達が倒れ、更に、彼の親友も刺され、隣に倒れた。



 まだ息をしている親友を周りの敵から守りながら、剣を振るフォアナックスは必死になった。握っている剣は相手の軍の血だらけ。藤色の瞳に疲れが現れている。


もうそろそろ限界・・・



 一人だけであれば、逃げられるかもしれない。けれど、フォアナックスは怪我している親友を捨てなかった。たとえそれは自分の命の対価になると分かっても。


 次々と水手国の敵が彼の前に現れ、一人だけ残っているフォアナックスは後ろから襲われた。背中を斬られた衝撃で、体勢を崩して膝を折る。


 その時にもう一人の水帝国の兵はフォアナックスの首を狙い、剣を振りかかる。



 命の最後と思ったフォアナックスはある声を聞こえた。


 「待って!」力強く鋭い声であった。


 その命令に従い、剣は彼の項に止まり、周りの兵士は命令を言った主に振り向け、名を呼ぶ。

 「ワーヤス兵長!!」


 
 フォアナックスは顔を上げると、兵長と呼ばれた者は目の前に茶色の馬に乗っており、鎧をかけている。

 見た目だけであれば、彼より年上が、そんなに年が違わないはず。鉄紺の長い髪は軽く後ろに結ばれており、桔梗色の瞳は真っ直ぐ彼を見詰めている。



 「なぜ一人で逃げぬ?これほど手腕を持っておるなら、一人で逃げ切れるはずだ」さっきと同じ鋭い声で質問するワーヤス兵長。


 すると、フォアナックスは相手を見詰めて真剣に答える。


 「友はまだ生きておる。彼を捨てて逃げることは出来ぬ」 


 「たとえ己が死んでも?」ワーヤス兵長はもう一つ質問する。
 

 答えの代わりにフォアナックスは頷いた。すると、ワーヤス兵長の顔に笑みが浮かび、告げる。


 「気に入った。良かろう。友と一緒にゆけ」


 戦には決して油断せねばならぬ。異常な行動に周りの兵士がワーヤスを止める。


 「兵長!上の方々にはどう説明すれば良いですか!?」


 命令は『全員始末する』という上からの命令であった。一人だけではなく、二人も殺さずに開放することは命令に違反するに違いない。


 にしても、ワーヤス兵長の決心が揺るがずに、言う。


 「良い、俺が説明する。今回の戦はもう勝利を決めた。こんな若い兵士の命を奪うことはなかろう」
 

 その後、ワーヤス兵長と彼の部下は、フォアナックスを放置し、その場から去った。



ワーヤス兵長はその時気付かなかったであろう・・・


あの日彼が救った二等兵はある日彼の最強の敵になること・・・


==2011年1月2日更新==

明けましておめでとうございます!!^^
番外編を楽しんで頂行ければと思います〜月神紫苑

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