FATE【BL】
第46話 7頁
簡単にいえば、ラーカインはフェガー大将が何を考えているかを知らなかった。一度も連絡出来なかった。
裏切られて、捕まえられて、拷問されて・・・
本当に裏切りなのか協力者なのか、確認できなかった時にバーナッドは、本気で悩んでいた。ラーカインの体調、それに、側近の裏切り。この二つでラーカインの命取りになる。
昼間の時、フェガー大将が協力者となった瞬間に土王はそう思った。全てがラーカインの『計画通り』だと。
しかし、ラーカインは違うと主張した。彼は一度も連絡したことが無かった。
そこまでフェガーを信頼したのか!?
バーナッドは、もし自分がフォアナックス大将に同じことをされれば、どうなるかと想像してみた。とりあえず、驚くであろう。
むろん、フォアナックス大将を信頼している。だが、少なくとも戸惑ったはず。動揺が見られるに違いない。
鳳凰殿から東の城に逃げ出したラーカインと会った時に、そのような動揺も戸惑いも一切感じられなかった。
レイサック水王も非常に驚いた。バーナッドやアルタイルならともかく、ラーカインのような性格は、誰に完全に信頼をあげることがあり得ないと考えていた。
胸が熱くなる・・・
なぜだろう?
(そこまでフェガー大将を信じたのか?)ある質問が胸に浮かんだ。答えは出ないけれど、胸が痛い。
ラーカインはレイサックに対して、ただ『待つ』という役割を与えた。それが彼を『信じない』という証にもなっているとレイサックは思う。
「良いのかそれ?」美しい唇から出たひとり言。
「は?」はっきり聞こえなかったラーカインはもう一度問った。
「フェガー大将が単なる気が変わったんじゃないか?」レイサックの声が一段と厳しくなった。
水王は自分の感情の変化に驚いた。心底から怒りが湧いてきた。いや、怒りではない。これは・・・
【嫉妬】
水王の心の中でその言葉が浮かんだ。確かにそうかもしれない。誰も信じず、愛さずに生きてきたラーカインは、ある部下に対し、そこまで信頼をあげるとは思わなかった。
「フェガーは俺を裏切らん」ラーカインはレイサックの質問に答えた。
分かっている・・・
分かっている・・・
もうやめて・・・心が、胸が、痛い・・・
自分が信頼してもらえなかった・・・
レイサックは心の中で訴えている。声にならない言葉。
ラーカインはレイサックの心を見通したように、次のことを述べた。
「違う。フェガーが俺を裏切ろうとしても、ルース側には絶対行かんと分かったから」
その言葉を聞きバーナッドはすぐに問いかける。それでも、ラーカインの口からなかなか事実が漏れなかった。
「どういう意味ですか?ラーク」
「どうでもいいだろう。事実はそれだけだ」
「ラーク、今日はそなたらしくありませぬ。何を隠しているのですか?」
「何もないんだ!お前ら考えすぎただろう?」
親友の土王と炎王が口論となった。すると、ラーカインの隣に座っているフェガー大将が立ち上がり、頭を下げ、告げる。
「もう良いです。王、これ以上、隠しても得することはございません。私から説明させて頂きます」
ルビー色の瞳が大きく開き、側近に真剣な声で確認する。
「良いか、フェガー?」
フェガー大将は頷き、笑みを見せた。炎帝国の大将は前に立ち、国賓室にいる者にあることを教える。
「これは私が炎王帝国の大将になる前の事です。私のかつての名は、『ローナス』でした」
「ローナス!?」ラーカイン以外の五人と、水帝国の者が一気にその名を繰り返した。
聞いたことが無い名前・・・
だが、『ローナス』といえば、『ラーナス』前炎王と彼の弟である『ルーナス』の名を思い出す。
この中で一番驚いたのは、誰でもなくバーナッド土王であった。隣に座っているアルタイル風王は、顔色が一変したバーナッドを見詰める。
一方、周りの反応を見てから、フェガー大将が話を続ける。
「私はかつて炎帝国の第三王子、ラーナス前炎王とルーナスの実弟、ローナスと申します」
==9月28日更新==
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