FATE【BL】
第46話 6頁
アルタイル風王は、レイサックから目を逸らしながら、話した。
レイサックは、アルタイルがバーナッドと一緒に土帝国に戻り、事情のことを話し合ったと思い込んだ。
「いや、僕が知りたいのは、炎帝国にいたバーナッドがなぜ手紙のことを知ったのだ。アルはその後に教えたとは別の話だから」
アルタイルは顔を左右に動かし言う。
「違う。僕からだ、ロス。直接にね・・・」
上手く説明できなかった風王。だが、今度レイサックはあることを思い付いた。カリナ姫の葬儀の前に、アルがここに泊まりに来た時の会話であった。
<<「ロス、僕は見えないけど、今僕の周りにバーナッドの力が君をムカつかせるほど囲まれているんだろう?」>>
アルタイルの身体の周りに、親友のレイサックが腹立つほど強い守りの力に囲まっている。それは、バーナッドの誓いであるとアルタイルが説明した。レイサックもそれ以上何も疑わなかった。
まさか・・・
レイサックはようやくアルタイルの言葉を理解した。また、風王はそれを承知した上でやったことではないと考えた。アルタイルの今の俯いている姿も含めて、四六時中監視されることなんて、誰も認めないはずだ。
アルタイルは力が使えないとはいえ、このような扱いは酷い。
酷すぎる!
ずっと監視されるなんて、奴隷でも囚人でもあるまいし・・・
いや、奴隷や囚人でさえ、このような扱いはしない!
「バーナッド、お前!アルを何だと思うんだ!」レイサックはバーナッドに向けて喚き、立ち上がった。
土王の紫色の瞳は、青色の瞳から逸らさず、むしろ真っ直ぐ見詰める。
「アルは、私が一番愛している者です」
しっかりとしたバーナッドの答えであった。迷いも感じなかった。
「ロス、もうやめよう」風王は親友を止めようとしたが、効果がなかった。レイサックの怒りは和らいでいない。土王に告げる。
「『愛されている』と『囚われる』は違う!大体、お前は許可なく勝手に力を張ったんだろう!?」
気に食わなかった。アルタイルはレイサックにとって、唯一の親友である。兄弟と言っても言いすぎたのではない。この屈辱的な行動は静かに聞いていられなかった。
力が使えなくても、アルは囚人じゃない!
レイサックは、自分も同じことされたことに気付いていない。
「静かにしろ!!」
今度、怒鳴ったのはレイサックの隣に座っているラーカインであった。彼は立ち上がり、レイサックの両肩を掴まえ、椅子に押し下げた。
「こんなことで騒ぐな!耳障りだ!お前の目的は何だ?話を聞くか?バスと喧嘩するか?ちゃんと考えろ!!」
レイサックは何を答える前に、ラーカインの後ろから、ぶつかる二つの剣の音が響く。
ワーヤス大将とフェガー大将の剣であった・・・
ラーカインはレイサックに近付いた瞬間に、剣を取り出したワーヤス大将。それに対し、フェガー大将が先に水帝国の大将を襲った。
国賓室の空気が一層重くなってきた。ラーカインはフェガーに剣を納めるように命じると、炎帝国の大将も言葉通りに従い、椅子に戻った。
「貴様もだ」
ラーカインにそう言われると、ワーヤスはレイサックに振り向いた。水王の頷きを見ると、ワーヤス大将も自分の剣を納めた。
自分の短気に負けてしまったレイサックは、ラーカインの言葉で冷静さを取り戻した。アルタイルのことも大事けれど、今もっと大事なのは全ての事実を知ることだ。
緊張が高まっている今、些細なことでもレイサックが狂ってしまいそうだ。
「ごめん。アルのことは後にする。バーナッド、話を続けて」
レイサックは詫びをした後、ラーカインは隣の椅子に戻った。
さっきの炎王に掴まえられたところが熱く感じる・・・
久しぶりにあんなに強く握られなかったから、身体が余計に敏感になった・・・
早くラーカインの腕の中に飛び込みたい・・・
早く・・・
レイサックは、自分の意識が一瞬飛んでしまった気がして自分の頬を軽く叩き、集中力を呼んだ。
一方、バーナッドは話を続ける。葬儀の話や誓いの宝石の話など、レイサックが知っているところを飛ばして、今朝のことについて簡単にまとめた。フォアナックス大将と副大将らが捕まえられたと聞き、彼は鳳凰殿で現れ、ラーカインを脱出させようとした。
「フェガー大将がラークに剣を振りかけた瞬間、全てが一変しました。フォアナックス大将たちの手錠がいきなり外れました。正直にいうと、私も驚きました。このような急展開になるとは思いませぬ。今回のこと、ラークが先に教えて頂ければ、別の戦略も考えられるかもしれぬ」
土王は本気で親友を叱った。フェガーが見方だと知れば、内部からの情報なども得られる。また、ラークも拷問されずに物事が、もっと簡単に終わるかもしれないのに、ラーカインはそうしなかった。
一方、『全てが一変した』とは何か?もっと詳しく聞きたいレイサック。しかし、質問する前に、ラーカインの口から誰も思わぬ事実が語られた。
「バス、お前は何を考えてる?アイツがフェガーを俺に連絡させるなんて、あり得ん。ルースの奴の疑り深い心、お前も知っているはずだろう?」
その言葉を聞き、その場にいる皆が唖然とした。バーナッドはすぐに質問する。
「じゃ、これまでそなたどうやってフェガー大将と連絡しましたか?」
「連絡できん!出来たら、俺はこんなに苦労はしないだろう?城の中で会った時でさえ隙間もないぜ!」ラーカインも即答した。
連絡出来ない・・・
じゃ、どうやってフェガー大将の裏切り行為が嘘だと知った?・・・
「そなたは国賓室のことを計画したのでは?」バーナッドは次々と質問をする。
「ここで言っておく。水帝国で倒れて以来、俺はフェガーとこの反乱について相談したことは一度もありん!」
==9月26日更新==
昨日旅の為、更新延期になって申し訳ございません。
〜 月神紫苑
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